美咲はグラスを磨く手を止め、フッと艶やかに笑った。

「あら、祐一くん、焦っちゃダメよ。競馬はね、データだけじゃ語れない深みがあるの。でも、まずは基本から。過去10年の傾向、ちゃーんと見てくれたかしら？」

祐一は慌てて頷く。「はい！前走ヴィクトリアマイル組はアリスヴェリテ、アルジーヌ、クリスマスパレード、ビヨンドザヴァレー、マサノカナリア…って、多いですね！あと、人気馬は信用しろってことで、アルジーヌとクリスマスパレードですか。」

美咲はゆっくりと頷く。「そうね、特にヴィクトリアマイルからの参戦は、G1で揉まれてきた実力馬が多いから、やっぱり注目よね。そして、人気馬が強いというのは、クイーンステークスの特徴のひとつと言えるわ。」

「その通り。そして、忘れちゃいけないのが、ノーザンファーム生産馬よ。エトラー、クリスマスパレード、テリオスララ…やっぱりこの牧場の馬は、底力が違うわね。」美咲はそう言って、祐一のグラスにゆっくりと氷を足した。

「あとはね、前走オープン1800m以上で大敗してても、着差1秒以内なら穴馬として一考、ってデータもあるの。これはアマイとライラックね。こういう馬がね、突如として激走するから、競馬は面白いんだから。」

美咲はニヤリと意味ありげな笑みを浮かべ、カウンターに肘をついた。

「祐一くん、やっと本題ね。私のお気に入りは、

やっぱり

クリスマスパレードかしら。

前走ヴィクトリアマイルからの参戦で、しかもノーザンファーム生産馬。人気を集めるのも納得の実力馬よ。」

祐一は感嘆の声を漏らす。「おおー！やっぱりそう来ましたか！なんか納得です！」

「でもね、穴馬としてもう一頭、気になるのがいるの。」

美咲は祐一の瞳を覗き込むように、ゆっくりと囁いた。

「それはね…

ライラックよ。

前走大敗していても、この馬には秘めたる力がある気がしてね。競馬はロマンだから。

祐一くん、どうかしら？私の激推し、乗ってみる？」