ベルカント:短距離の女王へ駆け上がった快速牝馬の軌跡と血統の秘密と“ミラクルおじさん“

父に短距離界の絶対王者サクラバクシンオー、母父にアメリカの快速馬ボストンハーバーを持つベルカント。この牝馬は、まさにその血統が示す通り、芝の短距離路線で圧倒的なスピードを武器に活躍しました。2歳での重賞制覇から始まり、古馬混合のサマースプリントシリーズを席巻し、「短距離の女王」としてその名を刻んだ彼女の鮮やかな軌跡と、その背景にある血統の奥深さに迫ります。

ベルカントの競走成績

2013年(2歳) ベルカントは2歳の夏に小倉でデビューし、466kgの馬体重で新馬戦を勝利しました。続く2歳小倉ステークスではホウライアキコに敗れ2着となりましたが、3戦目のファンタジーステークスで重賞を制覇。若手の角田晃一調教師は、阪神3歳牝馬S(現阪神JF)ではなく、牡馬混合戦となる朝日杯を選択する。阪神ではなく中山の方がこの馬のスピードを生かせると考えての挑戦だった。それに、距離適性的にも中山が有利に働くと踏んだのだろう。

朝日杯FSでは、好スタートから有り余るスピードで鼻に立ち、そのまま気の向くままにトップスピードを維持してゆく…だが、流石に残り100mで一塊の馬群に呑み込まれてゆく。3番人気に支持されるも距離の壁に阻まれ10着に敗れました。この年の2歳王者は朝日杯を制覇したアジアエクスプレスでした。


2014年(3歳) 休養明け3歳初戦のフィリーズレビューを制覇。続く桜花賞では4番人気に支持されましたが、ここでも距離の壁に阻まれ10着に敗退しました。3歳夏には古馬との初対戦となる北九州記念に出走し6着でしたが、勝ち馬とのタイム差は0.3秒と、今後の手応えを感じさせる内容でした。


22015年(4歳) 1年後、4歳になったベルカントは馬体重が488kgまで増え、逞しいスプリンターへと成長していました。アイビスサマーダッシュでは8枠を活かし、外ラチ沿いを力強く逃げ、後続を突き放して優勝。上がり3ハロンはなんと31.9秒という破格の時計を記録しました。ちなみに、三冠牝馬リバティアイランドは新潟の1600mで31.4秒の上がりを記録しており、ベルカントのスピード能力の高さがうかがえます。


宿命の対決:北九州記念でビッグアーサーを撃破

昨年の雪辱を果たすべく、絶好のローテーションで北九州記念に挑戦することになったベルカント。
しかし、彼女の前に立ちはだかったのは、同じ快速馬サクラバクシンオーを父に持つ、遅れてきた快速馬ビッグアーサーでした。ビッグアーサーは3歳春に未勝利戦を快勝した後、長期休養を挟んで1200mのスプリント戦を5連勝中。
500kgを超える巨漢馬で、まさにその名の通り“ビッグ”な存在でした。レースでは、1番人気をビッグアーサーに譲ったベルカントでしたが、自身も2番人気に支持されました。しかし、支持率はビッグアーサーの半分ほど。ベルカントの気まぐれなじゃじゃ馬ぶりに、成績が安定しない掴みどころのない性格が懸念されたのでしょう。
ところが、レースが始まると、ベルカントは内枠から先行集団に取りつき、内ラチ沿いでポジションを決めると、すっかり落ち着いてじっと様子をうかがっていました。そして最後の直線で早めに抜け出すと、猛然と追い込んでくるビッグアーサーを尻目に1馬身半の余裕をもって北九州記念を制覇。これで重賞は4勝目となりました。


翌2016年アイビスSDで2連覇の偉業を達成。

カルストンライトオ(2002,2004)カノヤザクラ(2008,2009)に継ぐ歴代3頭目となる。また、2016年北九州記念を2着となり2年連続でサマーシリーズ、スプリントチャンピオンに輝いた。管理したのは角田晃一調教師(元騎手)でシスタートウショウ(桜花賞)ノースフライト(安田記念)などG1を10勝していて、牝馬に乗せたら抜群であったのだが、それ以外にも彼に関する逸話がある。

“ミラクルおじさん“

皆さんは“ミラクルおじさん“をご存知だろうか?

“ミラクルおじさん“が当時話題となったのは…

角田晃一騎手のお手馬にヒシミラクルって名馬がいた。菊花賞や天皇賞春を制覇しているんだけれども、

宝塚記念でヒシミラクルの単勝オッズに異変が起きたのだ。“ミラクルおじさん“は安田記念で得た1,222万円の配当金をすべて宝塚記念でヒシミラクルの単勝にぶち込んだのだ為に歪みが生じて、その手の人らに気づかれたのだ…。

ヒシミラクルは見事“ミラクルおじさん“の期待に応えて優勝し“ミラクルおじさん“は払戻金の約1億9千万超えを手にしたのだ。なんでもこのおじさんは目撃情報から「サラリーマン風の中年男性」だったらしい。ちなみに、このヒシミラクルの父は先日函館記念でベローチェエラにレコードを塗り替えられたサッカーボーイですね


父サッカーボーイは1985年白老産、JRA賞最優秀2歳牡馬、同スプリンター。2~3歳時に11戦6勝、マイルチャンピオンシップ、阪神3歳S。

引退レースの有馬記念では、1着オグリキャップ、2着タマモクロス、3着にサッカーボーイでした。この時代は芦毛馬の全盛期で勝ち馬オグリ、2着のタマモともに芦毛馬だった。

主な産駒にナリタトップロード(菊花賞)、ティコティコタック(秋華賞)。母シュンサクヨシコは1992年三石産、3戦3着1回。おじダイワジェームス(4勝、エプソムC2着、七夕賞3着、ステイヤーズS3着)。近親にアカネテンリュウ(最優秀3歳牡馬)。一族にはカツラギハイデン牡馬(阪神3歳S)、オサイチジョージ(宝塚記念)。

苦い思い出…オサイチジョージvsオグリキャップの宝塚記念で勝負…?

最後に登場したオサイチジョージには、苦い思い出があります。

サッカーボーイが出走した最後の有馬記念の2年後、1990年宝塚記念での事です。単勝を10万円をぶち込んだ!(つもりだった)のだが、直前にびびって複勝に変更したんですね。

だって、相手はあのオグリキャップでしたから…“ヒシミラクルおじさん“とはえらい違いで恥ずかしいです…今では遥か昔ばなしとして、記憶の片隅でしょんぼりとたたずんでいます。

【血統】

父サクラバクシンオー

母セレブラール

母父ボストンハーバー


血統背景

ベルカントは、父サクラバクシンオー、母セレブラール、母父ボストンハーバーという血統を持つ日本の競走馬です。主に短距離で活躍し、特にサマースプリントシリーズでは2015年にチャンピオンに輝いています。この血統背景を詳しく見ていきましょう。
父:サクラバクシンオー
* 競走成績と特徴: 自身も短距離馬として名を馳せ、スプリンターズステークスを連覇するなど、芝の短距離では圧倒的なスピードを見せました。そのスピードは「バクシンオー」の名の通り、後続を突き放す強烈な逃げ切り勝ちが特徴でした。
* 種牡馬としての特徴: 産駒にも自身が持つ圧倒的なスピードを伝え、芝の短距離路線で多くの活躍馬を輩出しました。仕上がりが早く、2歳戦から活躍する馬が多いのも特徴です。代表産駒にはショウナンカンプなどがいます。また、母の父としてはキタサンブラック(G1 7勝)のような中長距離で活躍する馬も出すなど、多様な適応性を見せています。ベルカントもサクラバクシンオーのスピードを受け継ぎ、短距離でその能力を発揮しました。
母:セレブラール * 競走成績と特徴: 38戦3勝という成績で、競走馬としては大成できませんでした。初勝利まで10戦を要するなど、決して早い時期から活躍するタイプではありませんでした。
* 繁殖牝馬としての価値: 競走成績こそ目立たなかったものの、繁殖牝馬としては非常に優秀で、ベルカントの他にもロードカナロア産駒のイベリス(重賞勝ち馬)を輩出しています。これは後述する母父ボストンハーバーの影響も大きいと考えられます。
母父:ボストンハーバー * 競走成績と特徴: アメリカで2歳時にブリーダーズカップジュヴェナイル(G1)を制するなど、早熟の快速馬として活躍しました。芝・ダートを問わず短距離でのスピードに優れていました。
* 種牡馬としての特徴: 産駒には仕上がりが早く、短距離競走を得意とする馬を多く輩出しました。自身も早熟であったことから、その特徴を産駒にも伝えています。また、母父としては中距離適性や成長力に影響を与えるという評価もあります。
* 母系に潜む名血: セレブラールの母(ベルカントの母母)モンローウォークは競走成績こそありませんが、その母系には1983年英ダービー馬のTeenosoや2006年英ダービー馬Sir Percyなど、欧州のクラシックウイナーを多数輩出している超一流の牝系(名牝Violettaを祖とする)が潜んでいます。この背景が、競走馬としては目立たなかったセレブラールが、繁殖牝馬として優秀な産駒を出す要因になったと考えられます。
ベルカントの血統背景のまとめベルカントの血統は、父サクラバクシンオーの圧倒的な短距離スピードと、母父ボストンハーバーの早熟性とスピードが組み合わさることで、短距離適性に非常に優れた競走馬が誕生したと言えます。特に2歳戦から活躍し、ファンタジーステークス(GIII)、フィリーズレビュー(GII)といった重賞を制したことからも、早熟性を兼ね備えていたことがわかります。また、母セレブラール自身は競走馬としては地味だったものの、母父ボストンハーバーが持つ「仕上がりの早さ」「スピード」と、その母系が持つ「欧州の底力」が、ベルカントの能力を最大限に引き出す形になったと考えられます。特に、アイビスサマーダッシュや北九州記念といったスプリント重賞を制し、サマースプリントシリーズのチャンピオンになった実績は、まさにこの血統が持つ短距離適性の結晶と言えるでしょう。このように、ベルカントの血統背景は、父・母父から受け継いだスピードと早熟性、そして母系の奥深さに支えられた、短距離競走における理想的な配合であったと言えます。

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