ボンボヤージ生涯で見つけた銀河鉄道。トロッコに乗り、小倉の線路を疾走!
ボンボヤージが見た夢、それは生涯をかけて探し求めた銀河鉄道だったのかもしれない。蹄の音が響く小倉のターフは、いつしか星屑を散らす夜空へと変わり、彼女は一筋の光を曳くトロッコに乗って、夢幻の旅路を疾走する。これは、記憶の彼方に置き忘れた、一瞬の輝きを永遠に繋ぐ物語の始まり。
ボンボヤージ:生涯一度の幸運がもたらした北九州記念の衝撃
2022年、北九州記念で単勝164倍という大穴を開け、16番人気ながら見事に優勝を飾った5歳牝馬、ボンボヤージ。51kgの斤量で激走し、3連単は49万馬券を超えるビッグな配当をファンにもたらしました。まさに「生涯一度の幸運」と呼ぶにふさわしい、そんな彼女の奇跡的な勝利を紐解いてみましょう。
2022年北九州記念 ボンボヤージ レース回顧
出走馬とレース前の状況
このレースで、最軽量は49kgのアネゴハダ(3歳牝馬)でした。
ボンボヤージ(5歳牝馬)とテイエムスパーダ(3歳牝馬)はともに51kgで出走。1番人気はナムラクレア(3歳牝馬)で53kgを背負っていました。
ナムラクレアは小倉2歳ステークスを勝ち、年明けの桜花賞で3着、函館スプリントステークスを1着と好成績を収めての参戦です。2番人気はテイエムスパーダで、前走のCBC賞では48kgの斤量ながら逃げて2着に3馬身半差をつける圧巻の勝利を飾っていました。

ハイペースの展開と各馬の明暗
レースでは、テイエムスパーダが逃げ、3ハロン32秒8、1000m55秒2というハイペースで展開しました。
ボンボヤージは終始、内ラチ沿いの中団をロスなく走れたことが勝因に大きく影響しました。最終コーナーでは、各馬が外に膨らむ不利な状況から追い込みをかけます。8枠16番スタートのナムラクレア(浜中俊騎手)は、3コーナー突入でポジションが取れず、一旦馬を内に収めました。
しかし、これが裏目に出てしまいます。直線では、どこに進路を取ろうとしても常に横一列の「馬壁」が立ちはだかり、まるでゲームのように壁を避け、右へ左へと「馬壁」をかわすことになりました。ようやく「馬壁」に隙間が空き、猛然と突き抜けましたが、時すでに遅く、届きませんでした。

ボンボヤージの勝利と川須栄彦騎手
そんな中、まるでコース上に設置された線路を、トロッコが加速するようにぐんぐんとスピードを上げていくかのように、ボンボヤージだけがスムーズなリズムでゴール板を駆け抜けました。
この日のコンビは川須栄彦騎手で、彼は先日浦和のさきたま杯(JpnI・1400m、出走12頭)をシャマルでレコード勝ちし、前走のかしわ記念(JpnI)に続いて連勝を果たしたばかりでした。川須騎手にとっては、2015年のレッドアリオンでマイラーズカップを制して以来、7年ぶりの重賞制覇となりました。

その後のボンボヤージと未来への期待
一方のボンボヤージにとっては、約1年ぶりの勝利です。しかし、その後のボンボヤージはレース
で再び「線路」を見つけられず、精彩を欠く走りを繰り返してターフを後にし、繁殖入りしました。いつの日か、彼女の子供たちがターフで、彼女が残した「線路」を見つける日が来ることを願っています。
ボンボヤージの血統構成
* 父:ロードカナロア
* 母:ディープインアスク
* 母父:ディープインパクト
* 全兄:ファンタジスト
* 全弟:アスクワンタイム
血統解説
ボンボヤージは、現在の日本競馬を代表する超一流種牡馬ロードカナロアと、日本競馬史上最高の競走馬の一頭であるディープインパクトを母父に持つ、非常に魅力的な血統構成をしています。
父:ロードカナロア
現役時代にスプリンターズステークス連覇、香港スプリント連覇など、短距離からマイルで圧倒的な強さを見せた名馬です。
種牡馬としてもその成功は目覚ましく、アーモンドアイ、サートゥルナーリア、ダノンスマッシュ、パンサラッサなど、芝・ダート、距離を問わず数々のG1馬を輩出しています。ロードカナロア産駒の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
* スピードと瞬発力:
自身が短距離で活躍したように、産駒にもスピードと瞬発力を伝えています。
* 仕上がりの早さ:
早期から活躍する産駒が多く、2歳戦から頭角を現す馬も少なくありません。
* 幅広い適性:
芝・ダート、短距離から中距離まで、幅広い距離で活躍馬を輩出しています。
母:ディープインアスク(母父:ディープインパクト)
ディープインアスクの父は、言わずと知れたディープインパクトです。
ディープインパクトは、無敗の三冠馬として歴史に名を刻み、種牡馬としてもコントレイル、ジェンティルドンナ、キズナなど、数多くのG1馬を輩出し、長らくリーディングサイアーに君臨しました。ディープインパクトの血は、産駒に以下のような特徴をもたらします。
* 爆発的な末脚(瞬発力): ディープインパクト自身が持つ驚異的な瞬発力は、産駒にも色濃く受け継がれます。
* しなやかな身のこなしと高い身体能力: 芝の長い距離で真価を発揮する馬が多く、特にクラシックディスタンスでの活躍が目立ちます。
* 高い成長力: 晩成傾向の馬も多く、古馬になってからさらに力をつけるケースも見られます。ボンボヤージの場合、母がディープインパクト産駒であるため、ロードカナロアのスピードに、ディープインパクトが持つしなやかさや瞬発力、そして持続力が加わる可能性があります。
全兄:ファンタジスト、全弟:アスクワンタイムボンボヤージは、ファンタジスト、アスクワンタイムと全兄弟(同じ父と母を持つ兄弟)です。
* ファンタジスト:2018年の京王杯2歳ステークス(GII)を制し、朝日杯フューチュリティステークス(GI)でも4着に入るなど、2歳時から高い能力を見せました。短距離からマイルで活躍しました。
* アスクワンタイム:兄同様に2歳時からデビューし、新馬戦を勝利しています。
これらの全兄弟の活躍から、ボンボヤージもロードカナロア×ディープインパクトの配合が、早期からの活躍と短〜マイルでの適性を持つ馬を輩出することを示唆しています。特に、ファンタジストが重賞を勝っていることから、この配合のポテンシャルは非常に高いと言えるでしょう。