偉大な血筋、遅咲きの輝き ~グレーターロンドン、中京記念制覇の軌跡~|競馬-神がかり
2018年7月22日、夏の小倉競馬場ならぬ中京競馬場は、熱気と興奮に包まれていました。第66回トヨタ賞中京記念(G3)。ゴール前では、最後の力を振り絞る馬たちの激しい叩き合い。その激戦を制し、ついに重賞初制覇を成し遂げたのが、グレーターロンドンでした。この勝利は単なる一勝ではありません。母から受け継いだ偉大な血統、幾多の惜敗を乗り越えて掴んだ待望のタイトル。この日、彼はようやく「遅咲きの才能」から「確固たる重賞ウイナー」へとその肩書きを変えたのです。
2.下河辺牧場と名牝の血が紡ぐ物語
日本の競馬界において、数々の名馬を世に送り出してきた生産牧場は、その馬たちの血統とともに語り継がれます。北海道沙流郡日高町にある下河辺牧場もまた、そんな歴史を彩ってきた牧場の一つです。
特に、名牝たちの血を大切に繋ぎ、成功へと導いてきた実績は目覚ましいものがあります。その代表格が、三冠牝馬スティルインラブです。2003年、史上2頭目の牝馬三冠を達成した彼女は、下河辺牧場の生産馬としてその名を競馬史に刻みました。
そして、その血統の物語はロンドンブリッジへと続きます。ファンタジーSを制し、桜花賞2着と惜しくも大舞台での勝利を逃した彼女の夢は、仔たちへと受け継がれました。オークス馬ダイワエルシエーロという偉大な娘を輩出し、そしてその後に生まれたグレーターロンドンが、2018年の中京記念を制覇。母の無念を晴らすかのように重賞初制覇を果たし、下河辺牧場の血統の物語に新たな1ページを加えました。
近年も、その活躍は止まりません。ソウルラッシュは、ドバイターフとマイルチャンピオンシップを制し、国内外のビッグレースで輝かしい実績を残しました。
彼は、下河辺牧場が誇る血統の深さと、馬を見抜く確かな目を証明しています。
そして、2025年の夏、下河辺牧場の新たな期待馬たちが、重賞の舞台に挑みます。中京記念にはエコロヴァルツが、札幌記念にはココナッツブラウンが参戦予定。
彼らが、偉大な先輩たちに続いて栄冠を掴めるか、注目が集まっています。下河辺牧場は、名牝たちの血を紡ぎながら、常に競馬界の第一線で活躍する馬たちを輩出し続けています。その血統のロマンは、これからも私たちを魅了し続けるでしょう。
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3. 競走馬としての歩み:
遅咲きの才能、紆余曲折の道のり
デビューを勝利で飾り次走で2着後に、5連勝でオープン勝ちなど、その才能は早くから注目されていました。
しかし、G3の重賞レースでは、常にあと一歩のところで勝利を逃し続けます。重賞では何度も掲示板に載るものの、勝ち切れない。そのもどかしい日々は、「いつか重賞を勝てるはず」という期待と、「才能だけで終わってしまうのか」という不安をファンに抱かせました。
管理した大竹調教師によれば「…とにかく常に馬体、脚元、特にツメですね。これを逐一観察しながら次どうするのか…」など体質が弱かったようですしかし、彼は常に安定したパフォーマンスを見せ、大崩れすることはありませんでした。
その一戦一戦が、彼を強くしていったのです。そして迎えた中京記念。ハンデ戦という難しい舞台で、陣営は彼を勝利へと導くために、細心の注意を払って調整を重ねていました。

4.【レース回顧】第66回トヨタ賞中京記念(G3)~グレーターロンドン、満を持しての重賞初制覇
レコード決着、豪快に差し切る!
2018年7月22日、中京競馬場で行われた第66回トヨタ賞中京記念(G3)は、後方から豪快に差し切ったグレーターロンドンが、ついに重賞初制覇を飾りました。
幾度となく重賞の壁に跳ね返されてきた6歳牡馬が、その能力を存分に発揮し、名実ともにトップホースの仲間入りを果たした一戦でした。
ハイペースの激戦を制した、鮮やかな末脚レースは、逃げ馬マイネルアウラートとウインガニオンがハイペースで引っ張り、最初の600mを33.8秒で通過する速い流れとなり、縦長の馬群でした。
この厳しいペースが後方待機組に絶好の展開をもたらします。大外16番枠からスタートした1番人気のグレーターロンドンは、道中を中団馬群11番手で追走。
鞍上の田辺裕信騎手は、馬のスタミナを温存しながら、前が消耗するのをじっと待っていました。
直線に入ると、先に抜け出したウインガニオンを目標に、外から一気に脚を伸ばします。まるでジェット機のような加速を見せ、残り100mを切ってからライバルたちを次々とパス。
最後はロジクライとの壮絶な叩き合いを制し、3/4馬身差をつけてゴール板を駆け抜けました。勝ちタイムは1分32秒3(コースレコード)。上がり3ハロンのタイムはメンバー最速タイの34.1秒をマークし、強烈な追い込み能力を証明しました。
5.グレーターロンドンの血統が紡ぐ物語
グレーターロンドンは、競走馬としても、そして種牡馬としても、その偉大な血統が常に注目されてきました。彼の血統は、まさに日本競馬を代表する名血と、海外の重厚なスタミナ血統が見事に融合したものです。

※画像はイメージです
父:ディープインパクト
日本の競馬ファンなら誰もが知る、無敗の三冠馬。
ディープインパクトは、史上最高の瞬発力を持つ競走馬として、そして、史上最強の種牡馬として、数々のG1ホースを輩出してきました。彼の産駒は、しなやかな走りと、強烈な切れ味を持つことが大きな特徴です。グレーターロンドンの代名詞ともいえる、直線での爆発的な末脚は、まさに父ディープインパクトから受け継いだものです。
母:ロンドンブリッジ
ロンドンブリッジの母系が紡ぐ、途切れない活躍の歴史
グレーターロンドンの母ロンドンブリッジは、それ自体が名牝として知られていますが、彼女の牝系(母から母へと受け継がれていく血統)もまた、日本競馬史に名を刻む多くの活躍馬を輩出してきた非常に活力のあるラインです。ロンドンブリッジの母系は、日本に輸入された牝馬オールフオーロンドンから続く、通称「ロンドンブリッジ牝系」として知られています。この牝系から、代々優れた競走馬が誕生しています。
ロンドンブリッジの直仔たち
ロンドンブリッジは繁殖牝馬としても非常に優秀で、グレーターロンドン以外にも多くの重賞勝ち馬を送り出しました。
ダイワエルシエーロ(牝馬)父サンデーサイレンス2004年の**優駿牝馬(オークス)**を制覇。母が桜花賞2着と惜敗したクラシックの舞台で、見事にG1タイトルを獲得しました。母の果たせなかった夢を叶えた、まさに母系の代表的な成功例と言えるでしょう。
ビッグプラネット(牡)父ブライアンズタイム2006年の**京都金杯(G3)**を勝利。高い能力と勝負根性を示しました。
孫・曾孫世代の活躍ロンドンブリッジの血は、孫や曾孫の世代にも脈々と受け継がれています。
キセキ(牡)母はロンドンブリッジの娘ブリッツフィナーレ。父ルーラーシップ2017年の**菊花賞(G1)**を制覇。牡馬クラシックの最高峰を制し、その後も長きにわたってG1戦線で活躍しました。
ビッグリボン(牝)キセキと同じく、母はブリッツフィナーレ。2023年の**マーメイドS(G3)**を勝利。牝馬として重賞タイトルを手にしました。
このように、ロンドンブリッジの牝系は、オークス馬、菊花賞馬を輩出し、さらにグレーターロンドン自身も重賞を勝つなど、芝の中長距離からマイルまで、幅広い距離でG1級の活躍馬をコンスタントに生み出しています。
グレーターロンドンが種牡馬として成功する背景には、父ディープインパクトの血だけでなく、この堅実かつ活力に満ちた母系の存在が大きく影響していると言えるでしょう。
母父:ドクターデヴィアス(IRE)
ロンドンブリッジの父である
ドクターデヴィアスは、イギリスダービーと愛チャンピオンSを制した、欧州を代表する名馬です。彼の血統は、タフな馬場や長い距離にも対応できる、重厚なスタミナと持続力をもたらすことで知られています。グレーターロンドンが、単なるスピードだけではなく、厳しい展開の中京記念を勝ち切れたのは、母を通じて受け継いだこの底力があったからこそと言えるでしょう。
6.血統が結実した、遅咲きの才能
グレーターロンドンは、父ディープインパクトの瞬発力と、母ロンドンブリッジから受け継いだ欧州型のスタミナと底力が融合したことで、マイル路線でトップクラスのパフォーマンスを発揮しました。
引退後は種牡馬となり、その血はさらに未来へと繋がっています。2022年にデビューした初年度産駒の中から、ロンドンプランが小倉2歳Sを制覇。父が果たせなかった2歳重賞タイトルを、産駒が手にするという、感動的なストーリーを紡ぎました。
偉大な母から生まれ、偉大な父の血を継いだグレーターロンドン。彼の血統は、これからも日本の競馬界に新たな風を吹き込み続けるでしょう。