周りの馬たちがゲートを出ていく中で、彼は全く動じることなく、自分のリズムを保っていたの。この時期の2歳馬にしては珍しいくらい落ち着き払っていて、それが彼の最大の強みだと確信したわね。彼の気持ちに合わせようと考えていたの。「行けるなら行ってくれ」と、大久保龍志調教師とも事前に決めていたのよ。

風が強くてスタミナが心配になったけれど、折り合いはしっかりついていたから、そのまま逃げさせたの。

息を入れさせながら、いつでも動ける体勢を維持していたのよ。そして、勝負どころの4コーナー。ここで引き離すか、まだ脚を溜めるか、一瞬の判断が求められたわね。

早めに動くとゴール前で止まる可能性がある。でも、エイシンディードの反応の良さを信じて、スパートをかけることにしたの。彼の機動力がここでも生きたわね。

残り200mで先頭集団が並びかけてくる。すぐ後ろにはブラックチャリスに乗る浜中俊騎手が激しく追っているのが確認できたわね。さらに遅れてカイショーはフラフラしていて、スタミナ切れ寸前だったんじゃないかしら。

でも、そこからエイシンディードの末脚が爆発したのよ。私のゴーサインに力強く応え、一完歩ごとに加速していく。最後のゴール前はまさに圧巻だったわね。

逃げていたのに、まさかの再加速。信じられるかしら！？9番人気という評価だったけれど、彼はそれ以上の能力を秘めていることを証明してくれたのよ。

この勝利は、エイシンディードの秘めたるポテンシャルと、彼を支えてきたチームの努力の結晶だわ。本当に素晴らしい馬に乗せてもらったことに感謝したい。

これからも彼の成長が楽しみで仕方ないわね！何か他に聞きたいことがあったら、遠慮なく声をかけてちょうだい。そう言って、レイチェル・キングは最高の微笑みを見せた。