「奇跡の大穴!ホライゾネットの馬 アドマイヤジャスタが巻き起こした函館記念の衝撃」

2020年の函館記念は、競馬ファンの記憶に深く刻まれる一戦となりました。大方の予想を覆し、15番人気という低評価を覆して勝利したアドマイヤジャスタ。その単勝は7,730円、そして3連単に至っては343万円という、まさに“億馬券”級の超高配当が飛び出しました。

なぜ、これほどまでに人気薄だった一頭が、夏の函館で奇跡を起こせたのか。彼を勝利へと導いた「秘密兵器」ホライゾネットの存在と、その知られざる血統背景、そして波乱のレース展開に迫ります。これは単なる大穴劇ではない、競馬のロマンと奥深さを教えてくれた一頭の競走馬の物語です。

2020年函館記念:アドマイヤジャスタの大駆けとホライゾネットの奇跡

15番人気の激走/3連単343万超え…

2020年の函館記念では、1番人気に推されたのがカウディーリョでした。
2走前に3勝クラスを勝ち上がったばかりの4歳牡馬で、札幌で2勝を挙げていた実績が評価されました。2番人気は、前年のエプソムカップ覇者であるレイエンダ。3走前のダービー卿チャレンジトロフィーで3着と好走していたことに加え、クリストフ・ルメール騎手が騎乗することもあって人気を集めました。
一方、アドマイヤジャスタは2走前にホライゾネットという特殊な馬具を着用していました。これはフードの目穴部分をネットで覆ったもので、例えるなら「伊達政宗の眼帯を女性の網タイツにしたもの」と言えばわかりやすいでしょうか。本来はダートで泥が目に入るのを防ぐ目的で使用されますが、視野が遮られることで馬が集中して走る効果や、マンネリ化した気持ちを切り替える効果も期待されるようです。
そのホライゾネットを着用した2走前、アドマイヤジャスタは皐月賞以来7戦目にして初めて一桁着順(8着)と好走しました。まさに「効果てきめん!」と関係者は手応えを感じたことでしょう。
そして本番の函館記念でも、この秘密兵器ホライゾネットをまとって登場。見た目はまるでトンボのようで、どこかユーモラスな印象でした。しかし、レースでは道中中団に位置し、気持ち良さそうにリラックスしているように見えました。直線では外から力強く伸び、タイム1分59秒7、上がり36秒4で鮮やかに差し切ってしまったのです。
15番人気で単勝77.3倍、「こんなの走るわけないだろ!」とファンの9割近くが考えていた馬の激走に、ゴール板を駆け抜けた瞬間、場内は騒然となったことでしょう。まさに記憶に残る大波乱のレースでした。
2着にも13番人気の7歳牡馬53kgのドゥオーモがはいり、馬連13万、馬単27万超えの波乱で3連単は343万と世間一般のお父さんの年収に近い…
嫌、とてもツモなく驚きの配当金でした

アドマイヤジャスタという馬:知られざるポテンシャルと背景

重賞勝ち馬を輩出する堅実な血統

アドマイヤジャスタが15番人気という低評価に甘んじていた背景には、その血統の奥深さに気づかれにくかった点が挙げられるかもしれません。しかし、その血脈を辿ると、国内外で活躍した名馬たちの名前が連なります。
父系:世界を制したジャスタウェイの血
アドマイヤジャスタの父は、ジャスタウェイ(サンデーサイレンス系)です。ジャスタウェイ自身、国内外で輝かしい成績を残した競走馬でした。
* 戦績: 20戦5勝(海外2戦1勝)
* 主な勝鞍: 2014年 安田記念、天皇賞(秋)
* その他: 2014年には最優秀4歳以上牡馬に選出され、世界ランキング1位に輝くなど、国際的な評価も非常に高い馬でした。
ジャスタウェイの2代母、つまりアドマイヤジャスタから見ると3代母にあたる**Charon (USA)**もまた、非常に優秀な競走成績を残しています。
* Charon (USA) (1987年生まれ、牝馬)
* 戦績: 16戦7勝、2着5回、3着0回
* 獲得賞金: US$925,200
* 主な勝ち鞍: 1990年 コーチングクラブアメリカンオークス (G1)、ブラックアイドスーザンステークス (G2)、1991年 ランパートハンディキャップ (G2)など。
* 特に1990年の3歳シーズンにはG1を含む主要レースで活躍し、ブラックアイドスーザンステークスでは7馬身半差の圧勝を飾るなど、牝馬として非常に高い評価を受けていました。

母系:実力馬を輩出するノーザンダンサー系の血筋
母はアドマイヤテレサ(ノーザンダンサー系)で、アドマイヤジャスタは母の優れた産駒の一頭です。アドマイヤテレサからは、アドマイヤジャスタ以外にも重賞で活躍した兄弟馬を輩出しています。
* 異父兄:アドマイヤラクティ
* 戦績: 26戦6勝(海外2戦1勝)
* 主な勝鞍: 重賞2勝(2014年ダイヤモンドステークス、2014年コーフィールドカップ(豪G1))
* 海外G1を制覇するなど、中長距離で高い能力を見せました。
* 異父姉:サトノジュピター
* 戦績: 14戦4勝
このように、アドマイヤジャスタは父方からは世界的トップホースであるジャスタウェイの、母方からは重賞勝ち馬を輩出する堅実な血統を受け継いでおり、そのポテンシャルは十分に秘められていたと言えるでしょう。

勝利後のアドマイヤジャスタ:その後の活躍と影響

ずるずると彼の姿は見えなくなり始め

函館記念での劇的な勝利後、アドマイヤジャスタに対する重賞戦線での期待は高まりましたが、現実は厳しいものでした。
どうやらホライゾネットの効果に飽きてしまったのか、彼は再び以前のような「適当な男」に戻ってしまったようでした。それでも、函館記念勝利後しばらくは、彼なりに真面目とも受け止められる姿が目撃されていました。
年が明けて2021年、3戦後の小倉大賞典では、2歳時の未勝利戦以来となるメンバー最速の上がりを披露しました。そうなのです、彼なりに結果を求めて足掻いてはみたのです。しかし、現実は厳しく7着と敗退。結果がすべてという世界は、彼に重くのしかかりました。
彼の目は虚ろにさまよい、環境を嘆き、世間を憎んで生きるしかない。抵抗はできない。求められるままに、ただターフをさまよい続ける。
さらに1年後の函館記念で彼に会いました。言葉をかけることはできませんでしたが、ただ見守るのが精一杯でした。彼は必死に身体を動かし、前に食らいつくように見えましたが、本当は辛かったのでしょう。
ずるずると彼の姿は見えなくなり始め、いつしか、他の馬と並ぶようになっていました。隣にいたのは、かつて重賞を制覇した経験を持つ7歳のギベオンでした。二頭はしばらく肩を並べるようにして皆から取り残され、力尽きた肉体が崩れ落ちていくようにして、歩くようにゴールを通り過ぎました。
最後に一緒に肩を並べたギベオンは次走を最後に引退し、アドマイヤジャスタもその跡を追うように2戦後を最後にターフを去りました。

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