【ヴィクトリアm】夢、散る – アリスヴェリテの逃走と、砕いたアスコリピチェーノ

大外枠から悲壮な願いを背負ったアリスヴェリテが、鮮烈な逃走劇で観衆の心を掴んだ。しかし、最後の直線、漆黒の馬群が牙を剥く。内から、外から、並み居る強豪たちが猛追。その激流の中から、一際鋭い末脚で抜け出したのは、1番人気アスコリピチェーノだった。クビ差で掴んだ女王の座。紙一重の決着に、歓声とため息が入り混じるスタンド。最後まで諦めなかった逃亡者の魂は、人々の胸に深く刻まれた。春の府中を舞台に繰り広げられた、記憶に残る激戦の記録。

ヴィクトリアM芝1600G1

【レース結果】

ヴィクトリアM

2025/5/18(日) 2回東京8日 11R
ヴィクトリアマイル G1
4歳上オープン (国際)牝(指) 定量
芝左1600m (Bコース) 18頭 良
2025年ヴィクトリアマイルの上位5着までの結果は以下の通りです。(人気)
1着: アスコリピチェーノ(1)
2着: クイーンズウォーク(4)
3着: シランケド(7)
4着: アルジーヌ(5)
5着: アリスヴェリテ(15)
2025年ヴィクトリアマイルの払戻金は以下の通りです。
* 単勝 17番 アスコリピチェーノ: 250円
* 複勝
* 17番 アスコリピチェーノ: 130円
* 16番 クイーンズウォーク: 260円
* 12番 シランケド: 390円
* 枠連 8-8: 1,220円
* 馬連 16-17: 1,280円
* ワイド
* 16-17: 550円
* 12-17: 1,050円
* 12-16: 2,710円
* 馬単 17-16: 1,980円
* 3連複 12-16-17: 8,120円
* 3連単 17-16-12: 26,000円

レースラップ
33,9-22,9-35,3=1,32,1
3歳以上重賞
34,2-23,4-34,9=1,32,5

夢、散る – アリスヴェリテの逃走と、最後の直線で飲み込まれた希望

発走直前のドラマ、そして疾風の逃亡劇へ – アリスヴェリテの咆哮

「頼む、どうかゲートを出てくれ……!」大外18番枠、その場所に佇むアリスヴェリテの全身から、悲痛なまでの願いが滲み出ていた。
枠入りを嫌がり、二度、三度と見せる尻跳ねは、騎乗する池添謙一の心中を映す鏡のようだそれらの感情が、まるで目に見えない波となってアリスヴェリテへと流れ込み、彼女の神経を直接刺激しているかのようだった。観衆の固唾を飲む中、ゲートが開いた。
一瞬の静寂を破り、咆哮のようなスタートが切られる。各馬、一斉にダッシュを決め、淀みなく隊列は綺麗に整った。しかし、先頭争いは早くも水面下で激しい火花を散らしている。最初の1ハロン、先行勢は互いの出方を窺い、牽制し合う。だが、その均衡が崩れるのは時間の問題だろう。張り詰めた空気の中、一触即発の攻防が繰り広げられる。誰もが、これから始まるであろう、鮮烈な逃走劇の幕開けを予感していた。風を切り裂き、後続を置き去りにする、影の疾走を――。
「行けたら行ってくれ」中竹和也調教師から事前に指示があったのか…それとも彼自身の判断によるものかは測れない…が、騎乗の池添謙一は重賞99勝の「勝利を知る名手」である。冷静に判断を下し、勝利を目指す為に、クビ差…1馬身…遂に5馬身近く他馬を置き去りにした逃げに打って出た

ポジション争いの裏側 – 虎視眈々、それぞれの描くシナリオ

アドマイヤマツリ、シンリョクカ、ビヨンドザヴァレー、ソーダズリング。人気薄の意地か、はたまた一発を狙う野心か。
馬群の先頭で肩を並べ、虎視眈々とレースの主導権を窺っている。
その後ろでは、戸崎圭太の駆るステレンボッシュと、ダミアン・レーンの手綱捌くアルジーヌが、前を行く伏兵たちの動きを冷静に見極めている。確かな実力を持つ彼女たちは、いつでも抜け出せる態勢を整え、機を待っているのだ。
やや遅れたスタートとなったクリスマスパレードは、焦りはない。じりじりとポジションを上げ、射程圏内へと忍び寄る。
一方、クイーンズウォークとクリストフ・ルメール騎乗の1番人気アスコリピチェーノは、マークされる立場を理解している。周囲の動きを警戒しながらも、内に秘めたる自信を胸に、冷静にレースを進めている。
前走の勝利で勢いに乗るミルコ・デムーロ騎乗のシランケドは、中団でじっくりと脚を溜めている。再びの勝利を信じ、爆発的な末脚を繰り出すタイミングを計っているのだろう。
そして最後方には、2番人気ボンドガールとレジェンド武豊の姿。焦燥の色は見られない。彼女のポテンシャルを信じ、一瞬のチャンスを逃さずに、大逆転を狙っているに違いない。
それぞれの騎手と馬が抱く思惑が交錯する中、レースは刻一刻と佳境へと向かっていく。

緑の疾走、飲み込まれる影 – アリスヴェリテ、抗えぬ闇の胎動

アリスヴェリテは、まるで何れ母となる牧場を、未来への希望に満ちた足取りで駆け巡っているようだ。
風を切り、大地を力強く蹴るその姿は、まるで無邪気な子供が喜びを爆発させているかのよう。この広大な牧場が、いつか彼女の愛する仔たちの故郷となる。その日を夢見ているかのように、アリスヴェリテは生命力溢れる足取りで、喜びを予感させるように、緑の上を駆けていく。
残り400mを過ぎ、地鳴りのような蹄音が背後から怒涛の如く押し寄せる!粘り込みを図るアリスヴェリテの懸命の脚取りも虚しく、外からは嵐のような勢いでアルジーヌ、シンリョクカ、ステレンボッシュが牙を剥き、その漆黒の馬体を躍らせながら一気に迫り来る!
それでも、鞍上の池添謙一の叱咤に応えるように、アリスヴェリテは懸命に、懸命に、一完歩でも前へとその小さな身体を伸ばし続けた。しかし、その眼前には、じわりじわりと漆黒の闇が迫り始めていた……。
内から忍び寄るシランケド、外から鋭く伸びるアルジーヌ。川田将雅の騎乗する巨漢クイーンズウォークも、その大きな影でアリスヴェリテを覆い始める。そして、大外からは、一際深い漆黒となってアスコリピチェーノらが押し寄せてくる。それはまるで、抗うことのできない夜の帳のようだった。
懸命に光を掴もうともがくアリスヴェリテの馬体は、漆黒の波に 静かに飲み込まれていく。彼女の小さな背中が、闇に、闇に、沈んでいく。その姿は、まるで一筋の光が、無情な夜の深淵に消えていくようで、胸に言いようのない悲しみが募るのだった。

四頭並走、死闘の果て – アスコリピチェーノ、クビ差で女王戴冠

漆黒の馬群が、最後の直線でアリスヴェリテに牙を剥いた。内ラチ沿いから鮮やかな脚を見せるデムーロ騎乗のシランケド、鋭く伸びるレーンのアルジーヌ、巨体を揺らし力強く迫る川田将雅のクイーンズウォーク、そして、大外から満を持して追い込むルメール騎乗のアスコリピチェーノ。
ゴール板寸前、信じられない光景が広がった。四頭の馬が、まるで一枚の壁のように横一線に並び、勝負の行方は完全に観客の目に委ねられた。
最初に光を掴んだのは、僅かに外のアスコリピチェーノだった。クビ差、女王の座を射止めた瞬間、スタジアムは歓声に包まれた。
しかし、勝負は紙一重。
クビ差でクイーンズウォークが、ハナ差でシランケドが、アタマ差でアルジーヌが、それぞれ最後の一瞬に泣いた。
そして、懸命に粘り込んだアリスヴェリテは、先頭から3/4馬身差の5着。最後まで諦めずに走り抜いた彼女の姿は、多くの人々の胸に深く刻まれたことだろう。

【馬券考察】

【考察-1】アルジーヌ、惜しくも4着 – 次走への期待と課題

本命に推したアルジーヌは、無念の4着という結果に終わりました。展開が向かなかったとはいえ、馬券的には厳しい結末となりました。また、穴馬として注目した馬たちも力を発揮できず、今回は予想が的中しませんでした。
しかし、悲観ばかりではありません。アルジーヌは今回のレースで敗れはしたものの、決して力負けではありませんでした。不利な展開の中、最後まで食い下がる粘り強さを見せ、G1の舞台でも十分に通用するだけのポテンシャルを示唆したと言えるでしょう。
今回のレース内容を踏まえれば、次走以降、アルジーヌはこれまで以上の注目を集めることになるでしょう。それは、彼女が本格的なG1戦線へと駒を進める上で、避けて通れない道です。しかし、人気が高まるということは、同時に馬券的な期待値が低下することも意味します。
次走、アルジーヌがどのようなレースを見せてくれるのか。展開に左右されず、自身の力で勝利を掴み取るのか。プロの視点からも、その動向を注視していきたいと思います。今回の敗戦を糧に、更なる飛躍を遂げることを期待せずにはいられません。

【考察-2】ステレンボッシュ、連続大敗からの示唆 – 馬場と斤量の影響か

対抗に指名したステレンボッシュは、大阪杯に続き8着と期待を裏切る結果となりました。勝ち馬とは0.3秒差、上がり3ハロンは34.2秒と、先行した本命アルジーヌよりも時計を要しており、その敗因を深く考察する必要があります。
一つの可能性として考えられるのは、馬場状態が同馬に合わなかったのではないでしょうか。レース当日の馬場コンディションが、ステレンボッシュの持ち味である末脚を鈍らせたのかもしれません。
加えて、斤量も無視できない要因でしょう。大阪杯、そして今回のヴィクトリアマイルと、これまでよりも1kg重い56kgという斤量が、牝馬である同馬に少なからず影響を与えたとも考えられます。一般的に、牝馬の場合、55kgを超える斤量はレースパフォーマンスに大きな影響を及ぼすと言われています。
ステレンボッシュのこれまでの実績を考慮すれば、今回の連続した大敗は決して本調子ではない可能性を示唆しています。馬場適性、そして斤量。次走以降のレース選択においては、これらの要素を慎重に見極める必要がありそうです。今回の敗戦を深く分析し、再び輝きを取り戻すための鍵を見つけることが、陣営にとって重要な課題となるでしょう。

【考察-3】ヴィクトリアマイル、上位人気決着の裏に潜む展開の妙 – BOX馬券のジレンマ

今回のヴィクトリアマイルは、上位人気馬が順当に上位を占める結果となりました。しかし、その裏側には、レースの流れ、すなわち展開が大きく影響していたと言えるでしょう。
人気馬同士の決着は、一見すると予想が容易であったかのように思えますが、実際にはどの馬が展開の恩恵を受けるかを見極めるのが非常に難しいレースだったのではないでしょうか。
このような上位人気での決着は、BOX馬券の難しさを改めて浮き彫りにします。複数の有力馬を選択するBOX馬券は、的中率を高める一方で、配当が低くなる傾向があります。今回のレースのように、上位人気で決まった場合、的中してもトリガミ(払戻金が投資額を下回る)になるリスクも孕んでいます。
展開を読む力、そしてその展開に合う馬を見抜く眼。今回のヴィクトリアマイルは、改めて馬券戦略におけるこれらの要素の重要性を教えてくれる一戦だったと言えるでしょう。人気馬の能力を評価するだけでなく、レース全体の流れを読むことの難しさと奥深さを痛感させられました。

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