【2026年きさらぎ賞展望】5.9億円の衝撃か、重賞馬の威信か。京都外回りに集う「三階級特進」の精鋭10頭を徹底分析
早春の淀に、クラシックへの切符を懸けた若駒たちが集結した。今年の「きさらぎ賞(GIII)」は、単なる賞金加算の場に留まらない、稀に見るハイレベルなメンバー構成となった。
注目は、セレクトセールで5.9億円という破格の値を付けたキタサンブラック産駒の超大器エムズビギン。対するは、すでに重賞タイトルを手にし、冬のタフな馬場を歓迎するショウナンガルフ。さらに、世代屈指の瞬発力を誇るゾロアストロや、54kgの斤量で牡馬一蹴を狙う良血牝馬ラフターラインズなど、一筋縄ではいかない実力馬が名を連ねる。
逃げ馬3頭が演じる先行争いが、例年のスローペースを打破し、淀の直線で過酷な持続力勝負を強いるのか。コース適性、厳寒期の調整力、そして血統が指し示す「冬の京都」への最適解。クラシックの主役に名乗りを上げるのはどの馬か。全登録馬の能力と適性を多角的に解き明かす。
きさらぎ賞【有力馬診断】
エムズビギン
牡 3 (2023年) 友道 康夫厩舎
1. エムズビギンの個別分析
セレクトセールで5億9,000万円という破格の価格で落札された超良血馬。そのポテンシャルは疑いようがありません。
距離・コース適性血統面: 父キタサンブラック×母父Galileo。スタミナと持続力に長けた欧州的な重厚さを持つ配合です。京都芝1800mは外回りコースを使用するため、直線が長く、この馬のストライドを活かせる舞台です。
パフォーマンス: 前走の東京2000mでは、上がり34.3秒を繰り出しての完勝。スローペース(Mペース表記ですが実質は後半勝負)を中団から突き抜けており、東京の長い直線で高いパフォーマンスを示しました。
厳寒期・馬場適性馬格とパワー: 514kgという恵まれた馬格は、力が要る冬の荒れた芝や、寒さによる馬体の硬化に対してもアドバンテージになります。
稍重経験: 新馬戦で京都の稍重を経験(2着)している点は大きく、今の時計がかかり始めた京都の馬場も苦にしないはずです。
能力値の見極め前走で負かした相手の次走成績にも注目ですが、何より「友道厩舎×キタサンブラック産駒」というだけで、春のクラシック(皐月賞・ダービー)を強く意識した仕上げで来ることが予想されます。現状、重賞でも勝ち負けできるA級のポテンシャルを秘めています。
コレオシークエンス
牡 3 (2023年) 佐藤 悠太厩舎
新馬戦を快勝してここに挑むコレオシークエンスについて考察します。先ほどのエムズビギン(514kg)とは対照的に、こちらは444kgと小柄でシャープなタイプ。非常に興味深い対決図式になります。
1. コレオシークエンスの個別分析
父サートゥルナーリア、母父ディープインパクトという、現代日本競馬の「キレの結晶」のような血統構成です。
距離・コース適性血統面: サートゥルナーリア産駒は、溜めて爆発させる脚を持つ馬が多く、京都の外回りコースは非常に相性が良いです。母父ディープインパクトの影響もあり、直線のスピード勝負には絶対の自信を持っているはずです。パフォーマンス: 新馬戦(東京1800m)では逃げて上がり33.9秒をマーク。スローペースとはいえ、影を踏ませぬ完勝でした。今回は京都への輸送がありますが、東京で勝っている点は左回り・右回り問わず高い能力の証明となります。
厳寒期・馬場適性馬格の課題: 444kgという馬体重は、冬場のタフな京都の馬場において一つの懸念材料です。馬場が荒れてパワーが必要な展開になると、エムズビギンのような大型馬に力負けするリスクがあります。
コンディション: 11月の新馬戦から間隔を空けている点は好感。リフレッシュして成長分(馬体重増)があれば、厳寒期でも動ける下地が整います。
能力値の見極め新馬戦の勝ちタイム 1.48.7、上がり 33.9 秒という数字は、2歳秋の東京としては優秀です。特に逃げて上がり最速をマークしている点は、先行力と末脚を兼ね備えている証拠。スローペースが予想される「きさらぎ賞」において、この脚質は最大の武器になります。
ゴーイントゥスカイ
牡 3 (2023年) 上原 佑紀厩舎
新種牡馬コントレイルの産駒ゴーイントゥスカイですね。前2頭が「1勝クラス」の立場であるのに対し、こちらはすでに重賞(京都2歳S)3着の実績を持つ、実績・経験ともに現時点での最上位馬です。
1. ゴーイントゥスカイの個別分析
父コントレイル×母父Tapitという、スピードと完成度に秀でた配合。セレクトセール3,000万円は、この路線の有力馬としては「お買い得」と言える価格で、期待以上の成長を見せています。
距離・コース適性血統面: 父譲りのしなやかさと、母父Tapitから受け継ぐパワーが同居。2000mで連対していますが、1800mへの短縮は、道中の追走が楽になるためプラスに働く可能性が高いです。コース経験: すでに京都の芝2000m(内回り)で、重賞の厳しい流れを経験しているのは絶大な強み。今回は外回りになりますが、前走で10番手から5着(着差0.2秒)まで押し上げた末脚は、直線の長い外回りこそ活きます。
厳寒期・馬場適性タフな経験: 11月末の京都2歳Sという、2歳戦としてはレベルの高い一戦で揉まれている点は、新馬・未勝利を勝ち上がったばかりの馬に対するアドバンテージです。
馬格: 496kgと理想的な体躯。美浦(関東)の馬ですが、前走で京都への輸送をクリアしている点も、冬場の調整において安心材料となります。
能力値の見極め前走の京都2歳Sでは、中団やや後方からしぶとく伸びて3着。勝ったジャスティンビスタとは0.2秒差と僅差でした。スローペースからの瞬発力勝負(新馬戦)と、重賞の締まった流れ(京都2歳S)、両方のパターンで結果を出しているのは、この馬の自在性と地力の高さを示しています。
サトノアイボリー
牡 3 (2023年) 杉山 晴紀厩舎
1. サトノアイボリーの個別分析
父エピファネイア×母父クロフネ。エピファネイア産駒らしい前向きな気性と、クロフネ譲りの芦毛の馬体・パワーを兼ね備えています。
距離・コース適性血統面: 芝2000mで安定した走りを見せてきましたが、母ホエールキャプチャがマイルから中距離のG1で活躍したことを考えると、1800mへの距離短縮は「追走のしやすさ」と「終いの粘り」を両立させる好材料です。
コース経験: 京都コースは3戦中2戦経験しており、紫菊賞では2分を切る好タイム(1.59.3)でクビ差の2着。このコースへの高い適性は実証済みです。
厳寒期・馬場適性パワーの源泉: 母父クロフネの血が強く、今の時期の荒れ始めた京都の芝は、キレ味勝負の馬よりもこの馬のようなパワータイプに味方します。
気性面: 前走の京都2歳Sでは、道中で少し力む場面がありました。厳寒期は馬に活気が出すぎることがありますが、杉山晴紀厩舎(三冠牝馬デアリングタクト等を管理)の調整力で、ガス抜きができていれば一変します。能力値の見極め紫菊賞で負かした相手や、自身のタイムを考えると、「重賞でも通用するポテンシャル」は間違いなく持っています。前走の敗因は、重賞の独特のプレッシャーや展開の不向き(4コーナーでの不利など)と割り切れば、今回は実力上位の一角として数えるべき存在です。
ショウナンガルフ
牡 3 (2023年) 須貝 尚介厩舎
1. ショウナンガルフの個別分析
父ハービンジャー×母父ハーツクライという、いかにも「中長距離の重賞」に強い重厚な配合。2億1,000万円という高額落札馬であり、須貝厩舎×池添騎手という勝負師コンビも魅力です。
距離・コース適性血統面: 欧州由来のハービンジャー産駒は、持続的な末脚が武器。1800mは函館・札幌で2戦2勝と完璧な成績を残しており、今回の距離短縮は間違いなくプラスです。
コース経験: 京都は初参戦となりますが、洋芝(北海道)の重い馬場で勝っている点は、冬の荒れた京都芝に非常にマッチします。外回りコースで、自慢の持続力をどこまで発揮できるかが鍵です。
厳寒期・馬場適性冬の馬場: ハービンジャー産駒は「冬の京都」や「雨の馬場」に非常に強い傾向があります。他の瞬発力型(サートゥルやコントレイル産駒)が苦しむようなタフなコンディションになれば、この馬の独壇場になる可能性を秘めています。
状態面: ホープフルSからの放牧明け(しがらき帰り)となります。G1の大敗が「右回りの小回り中山が合わなかっただけ」とすれば、広いコースへの替わりで一変が期待できます。能力値の見極め札幌2歳SでマークしたS指数:91.9は、今回挙げられた馬たちの中でも抜けて高い数値です(洋芝の指数は出やすい傾向にありますが、それでも優秀)。最後方近くから外を回して差し切った内容は、着差以上に強いものでした。
シーミハットク
牡 3 (2023年) 寺島 良厩舎
1. シーミハットクの個別分析
父オルフェーヴル×母父ファルブラヴ。配合だけを見れば、スタミナと底力、そして少々の「気難しさ」を内包した、いかにも一発がありそうな血統構成です。
距離・コース適性ベスト距離: 京王杯2歳S(1400m)ではスピード負けして13着に沈みましたが、その前の京都1800m(未勝利戦)では逃げて0.3秒差の完勝を収めています。この時のタイム 1.48.0 は、コレオシークエンスの新馬戦(1.48.7)より速く、この距離がベストであることを証明しています。
コース経験: すでに京都芝1800mで勝利を挙げているのは、今回のメンバーでこの馬だけ。このアドバンテージは無視できません。
厳寒期・馬場適性血統的な恩恵: オルフェーヴル産駒は、総じてタフな馬場や厳しい気象条件下でパフォーマンスを上げる「道悪・冬場巧者」が多いです。綺麗な馬場でのスピード勝負より、今の荒れた京都のほうが間違いなく向いています。
状態面: 11月の京王杯以来、じっくりと間隔を空けてきました。成長期だけに、この休養で馬体がふっくらとしていれば、前走の負けを完全に度外視できる状態になります。能力値の見極め未勝利戦で見せた、「逃げて上がり34.1秒」という数字は優秀です。重賞実績馬たち(ショウナンガルフ等)と比較すると一見見劣りしますが、京都コースに限定した適性値では引けを取りません。
ストームゲイル
牡 3 (2023年) 四位 洋文厩舎
1. ストームゲイルの個別分析
父タリスマニックはメドウヘイヴン(凱旋門賞馬の父)の流れを汲む、スタミナと持続力に特化した血統。母父ダノンシャンティ(フジキセキ系)がそこにスピードを補完しています。
距離・コース適性スピードの絶対値: 前走、阪神1800mでマークした1.46.2という勝ち時計は非常に優秀です。同じ芝1800mでも、コレオシークエンス(1.48.7)やシーミハットク(1.48.0)より時計を詰めており、速い流れへの対応力を見せました。
コース適性: 京都芝1800mは既に2戦経験(4着・2着)しており、経験値は十分。特に2走前の未勝利戦では、上がり34.4秒で勝ち馬とクビ差。京都の外回りでも最後まで脚を使える適性を示しています。
厳寒期・馬場適性血統的恩恵: タリスマニック産駒は、時計のかかる馬場やタフな展開で真価を発揮します。12月末の阪神、そして2月の京都という「冬の芝」は、この馬にとって最も得意なコンディションと言えます。
勝負根性: 前走、ハナ差で競り勝った勝負根性は、重賞の厳しい叩き合いで大きな武器になります。能力値の見極め1戦ごとに着順を「4着→2着→1着」と上げ、時計も短縮させている「右肩上がりの成長力」が魅力です。S指数で見ても、未勝利戦ながら77.2をマークしており、重賞組と戦える下地は整っています。
ゾロアストロ
牡 3 (2023年) 宮田 敬介厩舎
1. ゾロアストロの個別分析
父モーリス×母アルミレーナ(母父ディープインパクト)。近親に活躍馬が並ぶノーザンファーム生産の超エリートです。
距離・コース適性究極の瞬発力: 前走、東スポ杯2歳Sでマークした上がり32.7秒という数字は、現3歳世代でもトップクラスの切れ味です。
コースの壁: これまで左回りの東京・新潟のみを走っており、「初の右回り」「初の京都」が最大の焦点となります。しかし、宮田厩舎の馬は輸送や環境変化に強く、京都の外回りであれば自慢の末脚を爆発させる舞台は整っています。
厳寒期・馬場適性モーリス産駒の馬力: 父モーリス譲りの筋量豊富な馬体は、冬のタフな馬場に非常に強いです。母父ディープインパクトのキレを持ちつつ、モーリスのパワーを兼ね備えているため、今の荒れた京都の芝はむしろ他馬を突き放すチャンスになります。
状態面: 前走から中10週と、リフレッシュしての参戦。1週前追い切りでもラスト11.4秒をマークしており、仕上がりは万全です。
能力値の見極め東スポ杯2歳SでのS指数:92.2は、先述したショウナンガルフ(91.9)を上回り、今回の登録馬の中で最高値。GIIでアタマ差の接戦を演じている以上、ここでは「主役」として扱われるべき存在です。
ラフターラインズ
牝 3 (2023年) 小笠 倫弘厩舎
1. ラフターラインズの個別分析
父アルアインは皐月賞と大阪杯を制した「内回りの鬼」でしたが、その産駒は高い機動力と渋太さが特徴です。
距離・コース適性スピードと時計面: 2走前の東京1800m(未勝利)でマークした1.46.0というタイムは、同日に行われた牡馬の未勝利戦よりも速く、今回人気が予想されるゾロアストロの重賞走破タイムと並ぶ驚異的な数字です。
コース適性: これまで広い東京・新潟・中京を歩んできましたが、父アルアインの血を考えれば、京都の「外回りから直線での粘り込み」という形は非常に合いそうです。
厳寒期・馬場適性牝馬の切れ味: 前走こうやまき賞(中京マイル)では、上がり32.9秒の豪脚を使いながらも届かずの3着。厳寒期の力の要る馬場は、一般的に牝馬には過酷ですが、この馬は460kg前後のしっかりした体格があり、パワー負けするタイプではありません。
血統的恩恵: アルアイン産駒は総じて馬場が渋ったり、タフな展開になってもパフォーマンスを落とさないのが強み。今の京都の芝も苦にしないでしょう。能力値の見極め1勝クラス(こうやまき賞)で1番人気を背負って3着と、賞金加算に失敗しているため、ここでの勝負気配は非常に高いです。S指数は80.8と安定しており、牝馬限定の重賞であれば主役級。牡馬相手でも54kg(2kg減)の斤量差を活かせれば、一発の可能性は十分にあります。
ローベルクランツ
牡 3 (2023年) 小林 真也厩舎
1. ローベルクランツの個別分析
父サトノダイヤモンド×母系にキングカメハメハとトゥザヴィクトリーを擁する超良血。「いかにも京都で走りそう」なバックボーンを持っています。
距離・コース適性京都適性: 父サトノダイヤモンドは京都外回りの菊花賞や天皇賞(春)で圧倒的な強さを見せた馬。産駒もまた、長い直線で持続的に脚を使う形を得意とします。
右回りへの回帰: 阪神の新馬戦(2着)、中京の未勝利戦(1着)といずれも右・中京コースで安定。前走の東京での敗戦は「左回りの瞬発力勝負」が合わなかった可能性が高く、右回りの京都へのコース替わりは大幅なプラス要素です。
厳寒期・馬場適性タフな馬場: 新馬戦(重馬場)で2着、未勝利戦も2分を切る好時計で完勝と、馬場不問の立ち回りを見せています。サトノダイヤモンド産駒は冬場のタフな馬場を苦にせず、むしろ他馬がバテる中でしぶとく伸びてくる傾向があります。
成長力: 6月から11月までに体重を20kg近く増やしながら成績を安定させており、成長の跡が顕著。休養明けでさらにビルドアップされていれば、冬の京都の急坂や荒れた馬場も力強く踏破できるでしょう。
能力値の見極め前走のS指数は81.9。ゾロアストロ(92.2)には離されましたが、道中3番手の積極的な競馬を試みた結果であり、度外視可能です。むしろ未勝利戦で見せた「中団から捲り気味に上がって突き放す」競馬は、京都の外回りコースで再現できれば非常に脅威となります。
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