【有馬記念展望】2025年、中山に響くは「新時代の足音」か「王者の咆哮」か
さあ、今年もこの季節がやってきました。12月28日、中山競馬場。1年の総決算・有馬記念(G1)の幕が上がります!3歳世代の台頭、空馬で世界を驚かせた伏兵、そして連覇を狙う女王……。砂塵舞う中山2500mを舞台に、私たちが目撃する「物語」を紐解いていきましょう!
有馬記念【予想】
◎ミュージアムマイル
牡 3 (2022年) 高柳 大輔厩舎
- 【有馬記念】刻むは世代の矜持――。ミュージアムマイル、盟友の魂を背に「最強」の証明へ
- 暮れの中山、グランプリの舞台に、一頭の3歳馬が静かな闘志を燃やして立つ。高柳大輔厩舎が送り出すミュージアムマイルだ。その背中には、今や単なる「期待馬」という枠を超えた、重厚なドラマが漂っている。
- ■ 敗北で証明した「真の底力」前走の天皇賞(秋)。同世代の怪物マスカレードボールと真っ向からぶつかり合い、惜敗を喫した。しかし、その価値は後に跳ね上がることとなる。マスカレードボールがジャパンカップで、欧州最強馬カランダガンとアタマ差の死闘を演じたからだ。世界レベルと伍した宿敵と、紙一重の勝負を演じたミュージアムマイル。あの敗戦は、彼がすでに日本競馬の頂点に手が届く位置にいることを、逆説的に証明してみせた。
- ■ 盟友たちの叫びを背負ってしかし、順風満帆な歩みではない。かつて2歳時に覇を競い、共に時代を築くはずだったアドマイヤズームやアルテヴェローチェといったライバルたちが、現在は苦境に立たされている。かつての盟友たちが味わう低迷の苦しみ、そしてターフを去った者たちの無念。ミュージアムマイルの凛とした佇まいに「哀愁」を感じてしまうのは、彼がそれらすべての想いを背負い、たった一人で世代の頂を死守しようとしているからではないか。「男の価値は、背負うものの大きさで決まる」――。散っていった仲間たちの魂の叫びが、彼の蹄音(ていおん)となって中山の直線に響き渡るはずだ。
- ■ 統計が示す「3歳馬」という絶対的優位
- 歴史を紐解けば、有馬記念は3歳馬がその完成度と勢いを見せつける場所である。
- 2021年エフフォーリア、2022年イクイノックス:天皇賞(秋)からの直行でグランプリを制覇。
- 2016年サトノダイヤモンド:菊花賞制覇の勢いのまま、古馬の壁を突き破った。
- 2015年キタサンブラック
- 2019年ワールドプレミア・サートゥルナーリア:ハイレベルな激走を見せ、馬券圏内を確保。3歳馬にとって、12月末のこの時期は肉体的に「ほぼ完成」の域に達しながら、斤量の恩恵を最大限に享受できるボーナスタイムだ。古馬との2kg差(56kg)は、過酷な中山2500mにおいて、翼を授けられたも同然の武器となる。
- ■ 盤石の仕上げ、不動の本命へ状態面にも一切の隙はない。1週前のCW追い切りでは、自己ベストタイムを更新する猛時計を叩き出した。高柳調教師の「今がまさにピーク」という言葉を裏付けるような、躍動感あふれる動きだ。宿敵への雪辱、低迷する盟友への鎮魂、そして世代交代の完遂。ミュージアムマイルが中山の急坂を駆け上がるとき、それは一頭のサラブレッドの勝利を超え、一つの「世代」が報われる瞬間となる。最早、彼を不動の本命と呼ぶことに、何の躊躇もいらない。
◯エキサイトバイオ
牡 3 (2022年) 今野 貞一厩舎
【有馬記念】未完の大器エキサイトバイオ、1枠1番から狙う「下剋上」の青写真
今年の有馬記念は、まさに群雄割拠だ。天皇賞(秋)で世代の意地を見せたミュージアムマイル、昨年の覇者レガレイラ、そしてジャパンカップで古馬の壁を突き破ったダービー馬ダノンデサイル。豪華な顔ぶれが並ぶ中で、異彩を放つ「未知の魅力」を秘めた一頭がいる。それがエキサイトバイオだ。
■ 驚異の「キャリア5戦」で見せた非凡な素質この馬の歩みは、かつての名馬たちの足跡と重なる。春に未勝利戦を勝ち上がってから、わずか半年あまり。4ヶ月の休養明けで挑んだ菊花賞(3着)は、まさに「スタミナの怪物」としての顔を覗かせた。特筆すべきは、そのキャリアの浅さだ。3冠馬コントレイルが7戦、天皇賞(春)連覇のフィエールマンが5戦で菊花賞に挑んだように、一線級の舞台へこれほど少ない戦歴で到達できるのは、選ばれた素質の持ち主である証に他ならない。鋭い切れ味こそ持たないが、泥臭くどこまでも伸び続ける持久力。そして一戦ごとに殻を破る若駒特有の成長スピードは、完成された古馬たちにとって最大の脅威となるはずだ。
■ 「絶好枠」が呼び込む勝利への方程式運命もまた、この馬に味方した。引き当てたのは、中山2500mにおいて絶対的な優位性を誇る**「1枠1番」**。これ以上の舞台設定はない。先行力を武器とするエキサイトバイオにとって、内ラチ沿いで最短距離を走り、スタミナを温存できるこの枠番は、勝利への最短ルートを意味する。直線、早めに抜け出して粘り込む「横綱相撲」を展開できれば、後続がどれほど速い上がりを繰り出そうとも、届かないセーフティリードを築くことは十分に可能だ。
■ 鞍上の勝負気配と「愛の力」手綱を取る荻野極騎手の存在も、見逃せないファクターだ。今年5月に結婚を発表し、公私ともに充実一途にある。競馬の世界において、精神的な充実は騎乗の質に直結する。守るべきものができた若き勝負師が、有馬記念という最高峰の舞台で、馬の能力を120%引き出す「プラスアルファ」をもたらす予感は十分にある。
■ 世代交代の主役へ、一気呵成「強い3歳世代」と言われる今年。ミュージアムマイルが「哀愁と意地」を背負うのに対し、エキサイトバイオは「無限の可能性と若さ」を武器に殴り込む。未完成ゆえの爆発力が、絶好の枠番と噛み合ったとき。ゴール板を真っ先に駆け抜けるのは、どの有力馬でもなく、内から抜け出したこの1番かもしれない。
▲ メイショウタバル:逃げて、粘って、夢を見る
単なる「逃げ馬」と侮るなかれ、今年の宝塚記念を制した立派なグランプリホースです。前走の天皇賞(秋)では、スローペースの瞬発力勝負という不向きな展開のなか、唯一追い込んで6着と意地を見せました。中山は初参戦ですが、過去のデータでは逃げ馬の3着内率は40%と上々。同型の存在は気になりますが、そこは百戦錬磨のレジェンド・武豊騎手。絶妙なペース配分で、古馬の貫禄を見せつけてくれるでしょう。
🔥 アドマイヤテラ:記録より記憶、そして今度は「記録」へ
今年のジャパンカップ、皆さんはあのシーンを覚えていますか?スタート直後に落馬しながらも、空馬のまま先頭集団に食らいつき、世界最強馬たちを内から抜き去ったあの芦毛の勇姿を。「幻の1着」としてファンの記憶に刻まれた彼が、今度はしっかりジョッキー(川田将雅騎手)を背にターフへ戻ってきます。世界を震撼させたあの走りが本物なら、ここで無印にするのはあまりに無礼。今度こそ、公式記録にその名を刻んでほしいですね!
🔥 レガレイラ:女王の矜持、連覇への挑戦
昨年の覇者が、牝馬として史上初の有馬記念連覇に挑みます。3歳勢と同じ56kgを背負う点は楽ではありませんが、住み慣れた中山の舞台。調教の動きも上々で、大崩れは考えにくい存在です。「やっぱり中山のレガレイラは強かった」……そんな結末も十分にあり得ますよ。
