「祐一くん、お疲れ様。いつもの？…ふふ、また競馬雑誌広げて。今週末は菊花賞ね。牡馬クラシック最後の栄冠、3000メートルという長丁場は、ドラマがあるわよ。」​美咲ママはグラスを磨きながら、祐一に優しく語りかけます。​

「祐一くんがいつも気にしている『人気馬』のデータから見てみましょうか。このレース、過去20年で見ると、やっぱり1番人気の信頼度は高いわね。8勝で勝率は40%、複勝率に至っては65%。

これはクラシックレースの中でも優秀な数字よ。今年の1番人気に推されそうなエリキングは、もちろん外せないわね。」​

「え、でもママ、2番人気も3番人気も、勝率はたった10%なんですね…。なんか、4番人気の3勝（15%）の方が頼りになるような…。」​

「そうね、それがこのレースの面白さよ。長距離適性やスタミナが問われるから、実力通りには決まりにくい部分もあるわ。見て、7番人気も過去に3勝しているの。人気薄の馬も一発を秘めている。だからこそ、『荒れる菊花賞』なんて言われることもあるわね。

例えば、祐一くんが『これは危ない』って心配してた、ジーティーアダマンやライトトラック。彼らは前走3着以内に入っていないから、データ的には割引が必要かもしれないけど…その分、波乱を呼ぶ可能性も捨てきれないわ。」

「じゃあ、この3000メートルを乗りこなせる馬って、どんな条件を持っているんでしょうね、ママ？」​「いい質問ね、祐一くん。ベテランの競馬ファンも悩むところよ。データから見えてくるのは、まず『前走は3着以内』という絶対条件。

多くの勝ち馬がここで好走しているわ。ただ、例外として皐月賞で4着以内に入っていれば、前走の結果が悪くても巻き返しがあるの。例えば、皐月賞で健闘していれば、3歳の春から厳しい戦いを勝ち抜くタフさを持っている証拠だからね。」​

「なるほど…。あと、やっぱり長距離は『上がり』、つまり最後の脚が重要なんですか？」​

「その通りよ。ゴール前の勝負所でどれだけ速い脚を使えるか。過去の傾向では、最終直線で上がり最速か2番目の脚を使えた馬が有力になっているわ。スタミナを温存しつつ、最後に爆発できる瞬発力を持っているか。

これはエリキングのような、決め手のあるタイプには有利な傾向ね。」​「キャリアは…エネルジコやジーティーアダマンは4戦だから、データ的には心配なところがありますよね。」​

「ええ。過去の勝ち馬の多くはキャリア5戦以上が理想的とされているわ。それだけ経験を積んで、心身ともに成熟している方が、過酷な長距離戦を乗り切れるということ。

キャリア4戦の馬は、その分、未完成な部分があるという見方もできる。だから、エネルジコあたりは実力は認めつつも、ちょっと危険を含んでいる、という見方になるわね。」

​「ふふ、祐一くん、だいぶ真剣な顔になってきたわね。でも、データはあくまで過去のもの。最後は『この馬だ！』って決めるロマンも大事よ。」​美咲ママは艶やかに微笑み、カウンターに肘をつきます。​

「もし、祐一くんが穴馬を狙うなら、私は『前走で下級条件（3勝クラスや2勝クラス）を勝って、しかも1、2番人気だった馬』を推すわね。

強い競馬で下のクラスを勝ち上がってきた勢いと、そのクラスでは人気を集めるだけの地力がある、ということだから。特に3勝クラスを勝って上がってきた馬は、穴を開ける実績があるの。」​

「3勝クラス…だと、ゲルチュタールですか！」

​「そうよ。この馬は前走の勝ちっぷりも良かったし、勢いがあるわ。ただ、G1で勝ち切るのは難しいかもしれない。連対、つまり2着までなら十分期待できる『連対候補』として見てるわ。」​「よし、僕も美咲ママの意見を参考に、馬券を組み立ててみます！」

エリキング

1番人気の信頼度が高く、上がり上位の脚も使えるため、データ的に最も安定した軸馬。

ゲルチュタール

前走3勝クラスを勝ち上がった勢いのあるタイプで、穴馬の好走パターンに該当。連対候補として2着迄を期待。