大波乱!ローズステークス2020を彩ったムジカと上がり馬たちの秋華賞への道|競馬-神がかり
2020年9月20日、中京競馬場で開催されたローズステークスは、単勝14番人気の伏兵ムジカが2着に激走し、3連単100万円超えの大波乱となりました。このレースは、秋の女王を決める秋華賞へ向けた重要な一戦であると同時に、隠れた素質馬たちが大舞台への切符を掴み取るための最後のチャンスでもありました。
人気を背負ったフアナが沈む中、なぜムジカと、同じく下位人気だったオーマイダーリンは激走できたのか。競馬界の格言「牝馬は格より調子」を体現した2頭の上がり馬に焦点を当て、歴史に残る一戦を振り返ります。
歴史的波乱の幕開け:2020年ローズステークス
2020年のローズステークスは、競馬ファンの記憶に深く刻まれる歴史的な大波乱となりました。中京競馬場で開催された第38回ローズステークス。
単勝では1番人気に推されたフアナが4.2倍とやや抜けていたものの、2番人気、3番人気も4.8倍、5.1倍とオッズは割れており、展開次第では波乱も起こりうる様相を呈していました。
レースは、3番人気のリアアメリアが勝利を収めましたが、その後に続いたのは単勝103.9倍のムジカ(14番人気)と、単勝59,4倍のオーマイダーリン(11番人気)でした。
この結果、3連単の配当は1,139,000円という超高額に。これは、ローズステークスの過去10年間で最高額であり、いかにムジカの激走がサプライズだったかを物語っています。

ちなみに、重賞の3連単配当歴代最高額は、2015年ヴィクトリアマイルの20,705,810円です。このレースもまた、1着が5番人気、2着が12番人気、そして3着が18番人気という、まさに大波乱でした。歴代の超高額配当ランキングトップ5のうち3つが牝馬限定戦であることは、「牝馬は格より調子」という格言を裏付けていると言えるでしょう。
セクション1:ムジカ、無名から大舞台へ
ムジカは、2017年4月2日に生まれた鹿毛の牝馬です。父はエピファネイア、母はローズアダージョで、馬名の「ムジカ」はイタリア語で「音楽」を意味します。栗東の鈴木孝志厩舎に所属していました。
デビューは2019年10月26日、京都競馬場の2歳新馬戦(芝1600m)で6着でした。その後、未勝利戦では苦戦を強いられましたが、2020年2月から5月にかけて5戦し、2着、2着、3着、3着と惜しいレースが続いた後、6戦目の未勝利戦(2020年5月24日、京都競馬場、芝1800m)で待望の初勝利を飾りました。
そして、キャリアの中で最も注目されたのが、2020年9月20日に中京競馬場で行われたローズステークス(GⅡ)でした。
このレースでは、14番人気という低評価を覆し、最後の直線で強烈な追い込みを見せ、リアアメリアに2馬身差まで迫る2着に好走しました。この結果、秋の女王決定戦である秋華賞への優先出走権を獲得しました。
セクション2:ローズステークス、奇跡の激走
フローラステークスまでのフアナの軌跡
デビューから一貫して芝の中距離路線を歩んできたフアナ。その走りは常に安定しており、特に1800mから2000mの距離で優れたパフォーマンスを発揮してきました。レースでは先行や差しなど、極端ではない位置取りから堅実に脚を使い、デビューからフローラステークスまでの4戦すべてで上がり最速を記録しています。
3戦目の**フローラステークス(G2)**では、勝ち馬ウインマリリンからわずか0.1秒差の3着と好走し、その高い素質を証明しました。
続く3ヶ月半の休養を経て、1勝クラスのレースに出走。馬体重がプラス28kgと大幅に増えていましたが、単勝1.5倍という圧倒的な人気に応え、快勝しました。
着差こそわずかでしたが、この勝利は次走のローズステークスに向けた試金石として十分な内容と評価されたのでしょう。
そして、その評価はローズステークス当日の単勝4.2倍、1番人気という支持に繋がりました。また、このレースには後にエリザベス女王杯を制覇するアカイイトも出走していたが、まだ素質開花前の蕾であった。
ローズステークス回顧:ムジカ、覚醒の2着
2020年のローズステークスは、リアアメリアが勝利を収めたものの、真の主役は14番人気の伏兵、ムジカでした。レースはエレナアヴァンティが引っ張る緩やかな流れ。
有力馬たちが中団から後方に控える中、ムジカも中団の馬群でじっくりと末脚を温存します。
直線に入ると、先に抜け出したリアアメリアが力強く伸びますが、その直後、まるで圧縮されていたバネが一気に解放されたかのように、ムジカが馬群の奥底から強烈な加速を見せました。
視界を遮る馬体を縫うように、まるで水を得た魚のように馬群の隙間をすり抜け、内ラチ沿いで懸命に粘るオーマイダーリンを、あっという間に抜き去ります。上がり3ハロン34.0秒という、放たれた矢のような勢いで先頭のリアアメリアを猛追。
一完歩ごとに差を詰め、ゴール前ではあと一歩のところまで迫り、クビ差の2着という驚きの結果を残しました。

14番人気という低評価を覆したその走りは、まさに圧巻の一言。
3着に入ったオーマイダーリンも、連闘という厳しいローテーションの中での好走は称賛に値します。
このレースで素質を開花させたムジカでしたが、次走の秋華賞で大敗すると、その後は勝ち星に恵まれませんでした。
好走はするものの勝利には届かず、引退レースとなった2022年暮れのサンタクロースステークスでは、4番人気に支持されるも、かつて自慢だった末脚は鳴りを潜め、11着と大敗。
このレースを最後にターフを去り、繁殖牝馬として新たな道を歩み始めました。

セッション3:激走の裏側、関係者の証言
ローズステークスは「春の実績馬」と「夏の上がり馬」が激突する舞台として知られています。
特に後者、格上挑戦で挑む馬たちにとって、このレースで3着以内に入り、秋華賞への優先出走権を獲得することは、秋の大舞台への切符を手にするための最後のチャンスです。
そのため、陣営の勝負度合いは総じて高く、人気の盲点となりがちな馬たちが、しばしば波乱を起こします。
ムジカもまた、その典型でした。未勝利戦を勝ち上がった後、1勝クラスで2着を確保し、満を持してローズステークスに駒を進めてきたのです。そして、見事にその勝負気に応え、大穴を開けてみせました。さらに驚くべきは、3着に入った11番人気のオーマイダーリンです。この馬もまた、前走で1勝クラスを勝ち上がったばかり。
しかも連闘という厳しいローテーションでの参戦でした。にもかかわらず、連闘の疲れを感じさせない走りで掲示板を確保。上がり馬たちの秋華賞にかける強い思いが、このレースの激走を支えていたのでしょう。
競馬-神がかり
2020年ローズステークス/着順結果