ディアドラ、北の大地で輝く!2018年クイーンステークス勝利から世界への飛躍|競馬‐神がかり

はじめに

2014年4月4日、北海道安平町に鹿毛の牝馬が誕生しました。その名はディアドラ。父はハービンジャー、母はライツェントという血統背景を持つ彼女は、日本の競馬史にその名を刻み、やがて世界へと羽ばたいていくことになります。

2017年の秋華賞(G1)を制し、既にG1馬の称号を手に入れていたディアドラですが、そのキャリアにおいて重要なターニングポイントの一つとなったのが、2018年のクイーンステークス(G3)でした。

この北の大地での勝利は、彼女が日本のトップホースから世界の強豪へと飛躍する、まさにその序章だったのです。当時の主戦騎手であったクリストフ・ルメール騎手とのコンビで掴んだこの勝利は、ディアドラの能力を一層際立たせました。

第1章:2018年クイーンステークス 圧巻の勝利

第66回クイーンステークス

2018年8月12日、北海道・札幌競馬場は、夏競馬の熱気と第66回クイーンステークスへの期待に包まれていました。

この日の主役の一頭であるディアドラは、前年の秋華賞でG1タイトルを手中に収め、すでに牝馬路線のトップランナーとしての評価を確立していました。

年が明けた2018年は、3ヶ月の休養明けで京都記念(6着)に出走し、その後ドバイターフ(3着)で世界を経験。再び休養に入り、約4ヶ月ぶりの実戦となるのがこのクイーンステークスでした。札幌の洋芝への適性が不安視される声もありましたが、ディアドラはそんな声を払拭する堂々たる佇まいで、堂々の1番人気(単勝3.2倍)に推されていました。

鞍上には、秋華賞の勝利も導いた主戦のクリストフ・ルメール騎手。久々の一戦ながらも、この完璧なコンビネーションで、ディアドラは夏の札幌の舞台に臨んだのです。

ゲートが開くと、ディアドラは中団後方、10番手のポジションからレースを進めます。先行争いは、ティーエスクライが前半1000mを59.1秒のミドルペースで引っ張る展開。札幌のタイトなコースで各馬がポジションを取り合う中、ルメール騎手は決して焦ることなく、ディアドラのリズムを最優先します。

第3コーナーを10番手で通過すると、外目を回りながらじわじわとポジションを上げ始め、第4コーナーでは7番手まで進出。そして迎えた直線。ここからディアドラとルメール騎手の真骨頂が発揮されます。

馬場の外目に持ち出されたディアドラは、そこから驚異的な末脚を炸裂させます。上がり3ハロン33秒7という圧巻の最速タイムを叩き出し、前を行く各馬を文字通り一頭ずつ飲み込んでいきました。

ゴール前で力強く抜け出すと、追いすがる4番人気のフロンテアクイーン(上がり34.4秒)を寄せ付けず、3馬身をつけて堂々と先頭でゴール板を駆け抜けました。勝ちタイムはコースレコードに迫る1分46秒2。

この鮮烈な勝利は、単勝320円、馬連1000円、そして3連単6560円という配当からも、その強さが裏付けられました。久々の実戦、そして洋芝への対応という課題を見事にクリアしたクイーンステークスでの圧勝劇は、ディアドラのさらなる飛躍を予感させる、まさに輝かしい一歩となったのです。

第2章:クイーンステークスが示す「ディアドラらしさ」

安定感と勝負強さ

クイーンステークスで見せたディアドラの走りは、まさに彼女の競走馬としての特徴を凝縮したものでした。

特筆すべきは、その安定感と勝負強さです。デビューから引退まで、7勝、2着3回、3着2回という重賞での堅実な成績が示すように、ディアドラは常に上位争いを繰り広げました。

クイーンステークスにおいても、中団からの差し切りという、彼女の得意な形で勝利を収め、その末脚の切れ味とレースセンスの非凡さを見せつけました。

また、タフネスと適応力もディアドラを語る上で欠かせない要素です。国内の様々な競馬場に加え、香港、ドバイ、イギリスと、遠征競馬を繰り返し、世界の強豪相手に臆することなく戦い抜きました。

クイーンステークスでの洋芝適応能力は、その後の海外遠征で、現地の芝コースに難なく対応する姿へと繋がっていったのです。彼女は常に最高のパフォーマンスを追求し、場所を選ばない「真のホースマン」でした。

競馬-神がかり

第3章:クイーンステークスから世界へ!ディアドラの国際挑戦

イギリスG1制覇

世界のトップホースが集うこの舞台

クイーンステークスでの勝利でさらに自信を深めたディアドラは、その後、日本のG1戦線で好走を続けます。そして、その視線は世界へと向けられることになります。

クイーンステークス勝利の翌年、2019年には本格的に海外遠征を開始。ドバイのターフ(G1)で4着と健闘すると、夏にはイギリスに渡り、アスコット競馬場で行われたナッソーS(G1)に出走します。

世界のトップホースが集うこの舞台で、ディアドラは日本の代表として堂々たる走りを見せ、見事に優勝。日本調教牝馬として史上2頭目のイギリスG1制覇という快挙を成し遂げました。この勝利は、日本のホースマンたちに大きな感動と自信を与え、ディアドラは、まさに日本馬の海外遠征におけるパイオニア的存在として、その道を切り開いていったのです。

第4章:血統から見るディアドラの才能

ハービンジャー産駒は、総じてスタミナ豊富で成長力に富む傾向

ディアドラの卓越した能力は、その血統にも深く根ざしています。

父は、凱旋門賞馬デインドリームの父として知られるハービンジャー。

ハービンジャー産駒は、総じてスタミナ豊富で成長力に富む傾向があり、ディアドラもまさにその特徴を色濃く受け継いでいました。タフなレースをこなせる底力と、キャリアを重ねるごとにパフォーマンスを向上させる持続力は、父からの贈り物と言えるでしょう。

兄弟馬にも本賞金1億円を超えるフリームファクシや、同じくハービンジャー産駒のリューベックなど、活躍馬が名を連ねています。

一方、母のライツェントは、サンデーサイレンス系のスペシャルウィークを父に持ちます。スペシャルウィークは日本のG1を多数制した名馬であり、その血はディアドラに日本競馬のスピードと切れ味をもたらしました。

母ライツェントは、ディアドラの他にもオデュッセウスやフリームファクシといった重賞級の活躍馬を輩出しており、繁殖牝馬としても非常に優秀であることがわかります。2015年のセレクトセールで2268万円で取引されたという記録は、当歳時からディアドラに大きな期待が寄せられていたことの証しでもあります。

第5章:ディアドラが残したもの、そして未来へ

「ドラちゃん」の愛称で親しまれ

「ディアドラ」という馬名は、ケルト神話に登場する悲劇の美しい女性の名に由来します。

2021年2月15日に競走馬登録を抹消されたディアドラ。彼女は現役を退いた後、繁殖牝馬として新たな役割を担っています。

厩舎のメンバーからは「ドラちゃん」の愛称で親しまれ、その勝負服である黄地に青一本輪、袖青一本輪は、多くのファンの目に焼き付いています。

彼女が日本の競馬界に残した功績は計り知れません。国内でのG1勝利はもちろんのこと、その最も大きな功績の一つは、日本馬の海外遠征における成功モデルを確立したことでしょう。

イギリスでのG1勝利は、日本馬が世界のトップレベルで通用することを証明し、その後の多くの遠征馬に勇気を与えました。

「ディアドラ」という馬名は、ケルト神話に登場する悲劇の美しい女性の名に由来します。しかし、彼女の競走馬としての物語は、決して悲劇ではありませんでした。むしろ、数々の栄光を掴み、世界を舞台に輝いた、まばゆいばかりのサクセスストーリーです。

そして、そのサクセスストーリーは、今、次世代へと受け継がれようとしています。

ディアドラの初産駒は牝馬のシオーグ。父は無敗のフランスチャンピオン2歳馬であり、ヨーロッパで最も注目される種牡馬の一頭であるウートン・バセット (Wootton Bassett) です。シオーグは2025年7月27日現在で既に5戦を消化していますが、残念ながらまだ勝ち星を挙げるには至っていません。

とはいえ、ディアドラ自身もデビューから3戦目での初勝利でしたし、まだキャリアは始まったばかりです。

父ウートン・バセット産駒には、2025年の京成杯に出走したパーティハーンがいました。期待された京成杯では残念ながら惨敗し、その後のすみれステークス(2200m)でも良いところなく敗れましたが、その走りを見る限り、洋芝や重馬場を得意とする可能性を秘めているように見えます。

パーティハーンが札幌や函館に出走してくる際には、忘れずに注目したいものです。

少々話が逸れましたが、ディアドラはまだ若く、これからも数多くの産駒をターフに送り出すことでしょう。ディアドラが残した蹄跡は、日本の競馬の未来を照らし続けるに違いありません。

彼女の血を引く子供たちが、母の偉業を受け継ぎ、競馬界の新たな歴史を創造してくれることを、これからも私たちは楽しみに見守っていきます。

競馬-神がかり

競走馬情報ディアドラ

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です