電光石火の末脚、上がり31秒6!ラインミーティアの軌跡 2017年アイビスSDを制した快速馬 |競馬‐神がかり
2017年の夏、新潟競馬場の直線1000mを舞台に行われたアイビスサマーダッシュ。この短距離の祭典で、多くの競馬ファンの度肝を抜く走りを披露し、その名を刻んだ一頭の馬がいました。
彼の名は、ラインミーティア。7歳というベテランの域に差し掛かりながらも、鮮やかな末脚でライバルたちを置き去りにし、見事重賞初制覇を飾った快速馬の軌跡を辿ります。
レース前のラインミーティア:直線に懸けるベテラン
ラインミーティアは、2010年2月26日に新冠町のアラキファームで生まれた鹿毛の牡馬です。
父はメイショウボーラー、母はアラマサフェアリー、母の父はオースという血統構成で、馬名の意味は「冠名+流星」を表します。
馬主は大澤繁昌氏、美浦の水野貴広調教師が管理していました。アイビスサマーダッシュ出走時、ラインミーティアは7歳という年齢に達していましたが、直線競馬への適性は以前から示唆されていました。これまでのキャリアで培ってきた経験と、得意な舞台での一変が期待されていました。
2017年アイビスSD 激走の舞台裏:
衝撃の上がり3ハロン「31秒6」
スピードで駆け抜ける「快速馬」
迎えた2017年アイビスサマーダッシュ。レースは逃げるフィドゥーシアが軽快なペースで飛ばす展開となりました。
しかし、後方から馬群を縫うように伸びてきたのが、ラインミーティアでした。後半に入ると、ラインミーティアはまさに電光石火の末脚を繰り出します。
逃げ粘るフィドゥーシアが上がり3ハロン32秒4という速い時計をマークする中、ラインミーティアはそれをさらに上回る上がり3ハロン31秒6という驚異的なタイムで差し切り、ゴール板を駆け抜けました。
これは、三冠牝馬リバティアイランドが新潟芝1600mの新馬戦で記録した上がり3ハロン31秒4の最速に迫る、まさに圧巻の数字でした。
**アイビスサマーダッシュのレコードは2002年にカルストンライトオが逃げて叩き出した53秒7(上がり3ハロン31秒9)**ですが、ラインミーティアは差し馬でありながら、それに匹敵する上がりタイムを記録したのです。
1ハロン9秒6という我々人類では想像もつかない速さで駆け抜ける競走馬の能力を改めて実感させる勝利でした。
国民的アイドルホースとして知られるオグリキャップが一完歩8メートルと言われる中、ラインミーティアもまた、新潟の平坦な直線1000mを圧倒的なスピードで駆け抜ける「快速馬」にふさわしい記録を叩き出したのです。
※1ハロン=200m
勝利の要因分析:
時計のでる条件とベテランの経験そして「スピード狂」の導き
ラインミーティアのアイビスSD制覇には、いくつかの要因が考えられます。まず、レースの舞台となった新潟競馬場の芝1000m直線は、馬場が軽く、直線が平坦で長いという、まさに「時計のでる条件」が揃っていました。
今回はスローペースとはいきませんでしたが、この条件がラインミーティアの持ち味である瞬発力と持続力を最大限に引き出すことになったのは間違いありません。
そして、勝利の立役者の一人として忘れてならないのが、鞍上の西田雄一郎騎手です。7歳というベテランのラインミーティアが、その豊富なレース経験を活かし、自身の力を出し切るレース運びができたのも、西田騎手との見事なコンビネーションあってこそ。
しかし、西田騎手といえば、実はこんな逸話があります。現役時代、なんと道路交通法違反(スピード違反)で騎手免許を返納したという経歴を持つんです。
一般人からすればJRAのペナルティは厳しすぎるとも思える一件ですが、ラインミーティアとのコンビで迎えたこのアイビスSD。
まさに**「スピード狂いかよ?!」とツッコミたくなるような、電光石火の末脚を引き出したのは、もしかしたら彼の体内に流れる「スピードの血」**がそうさせたのかもしれませんね! ラインミーティアと西田騎手、まさに「スピード」で繋がった二人が掴んだ勝利だったと言えるでしょう。
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【血統】父メイショウボーラー×母アラマサフェアリー
血統が語るスピードの根源:
隠れた名血「Northern Dancer」のクロス
ラインミーティアの快速ぶりは、その血統背景にも深く関係しています。彼の5代血統表を紐解くと、特に注目すべきは、世界的な大種牡馬である**Northern Dancer(ノーザンダンサー)**の血が「M4×S5」という形でクロスしている点です。
これは、父メイショウボーラーの母系4代前と、母アラマサフェアリーの父系5代前にノーザンダンサーが位置していることを示します。
* 父メイショウボーラーは、父がタイキシャトル、その父がStorm Cat(ストームキャット)という、現代競馬においてスピードとパワーを伝える一流の血筋を持っています。Storm CatはNorthern Dancerの孫にあたります。
* 母アラマサフェアリーの父であるオースは、Fairy King(フェアリーキング)の産駒で、Fairy KingもまたNorthern Dancer直系の種牡馬です。
* さらに、母アラマサフェアリーの母であるアラマサキャップは、かの芦毛の怪物オグリキャップを父に持ちます。
オグリキャップの母系にも、Native Dancer(ネイティブダンサー)やシルバーシャークといったスピードを伝える血が含まれており、ラインミーティアの瞬発力の根源となっています。
このように、ラインミーティアの血統は、Northern Dancerを通じてスピード能力を代々受け継いできた背景が強く示唆されます。
特に、直線を駆け抜ける速さが求められる千直の舞台において、これらのスピード血統の集合がラインミーティアの爆発的な末脚を支えていたと言えるでしょう。
F4-lというファミリーナンバーも、トリーテイ(AUS)という優秀な輸入基礎牝馬に連なる血筋であり、脈々と受け継がれてきた能力の高さを示しています。
タイキシャトル:
伝説のマイル王、そして優れた種牡馬
タイキシャトルは、1994年アメリカ生まれの栗毛の牡馬です。彼の競走馬としてのキャリアは、まさに「マイル王」の名にふさわしいものでした。
驚異の戦績タイキシャトルは、わずか13戦で11勝という圧倒的な成績を残しました。特に1600mの距離では無敗を誇り、1997年のマイルチャンピオンシップとスプリンターズステークスを制覇。翌1998年には安田記念を勝ち、さらにフランスのGⅠジャック・ル・マロワ賞を制して、その実力を世界に示しました。
同年には年度代表馬にも選ばれ、1999年にはJRA顕彰馬となるなど、その功績は高く評価されています。蹄が脆いという弱点を抱えながらも、それを乗り越えて残した記録は、まさに伝説的と言えるでしょう。
種牡馬としての貢献引退後は種牡馬としても活躍し、自身のスピードとパワーを多くの子どもたちに伝えました。
主な産駒には、ラインミーティアの父であるダートGⅠ馬メイショウボーラー、そして芝のGⅠ馬ウインクリューガーなどがいます。タイキシャトルの血は、芝・ダートを問わず、様々な舞台で活躍する競走馬を生み出し、日本競馬に多大な貢献をしました。
オグリキャップ:
芦毛の怪物、国民的アイドルホース
オグリキャップは、1985年北海道生まれの芦毛の牡馬です。彼の物語は、地方競馬から中央競馬の頂点へと駆け上がり、多くの人々に愛された「国民的アイドルホース」としての軌跡です。
地方からの挑戦、そして全国区へオグリキャップは、笠松競馬場でデビューし、圧倒的な強さで連勝を重ねました。その後、中央競馬に移籍すると、その並外れた能力で瞬く間にスターダムを駆け上がります。
地方出身というハンデをものともせず、数々の強豪馬たちと激戦を繰り広げ、多くのファンを魅了しました。
記憶に残る名勝負と感動の引退彼の現役生活は、まさに名勝負の連続でした。特に、ライバルたちとの激しい叩き合いは、当時の競馬ファンを熱狂させました。
そして、引退レースとなった1990年の有馬記念。多くの人々が「もう終わった」と思っていた中で、奇跡的な復活を遂げ、見事な勝利を飾ります。この劇的な勝利は、競馬史に残る名場面として語り継がれており、彼の人気を不動のものとしました。
世代を超えて愛されるアイドルホースオグリキャップは、その美しい芦毛の馬体と、どんな状況からでも諦めずに走り抜く姿で、競馬ファンだけでなく、多くの一般の人々からも愛されました。
彼の人気は社会現象となり、競馬ブームを牽引する存在となりました。引退後も、その雄姿は語り継がれ、今もなお多くの人々の心の中で輝き続ける「国民的アイドルホース」です。
勝利がもたらしたもの:短距離界に名を刻んだ快速馬
アイビスサマーダッシュでの衝撃的な勝利は、ラインミーティアの名を短距離界に知らしめました。残念ながら、彼はこの翌年の2018年8月2日に抹消されましたが、その短い現役生活の中で、アイビスサマーダッシュでの鮮烈な走りは多くの競馬ファンの記憶に深く刻み込まれています。
ラインミーティアは、決して順風満帆な競走生活を送ってきたわけではありませんが、得意な舞台で最高の輝きを放ち、その能力を証明しました。彼の残した記録と、直線競馬での圧倒的なパフォーマンスは、まさに快速馬の証であり、競馬の面白さとロマンを私たちに教えてくれる存在と言えるでしょう。