バー「夜蝶」のカウンターには、いつものように証券マンの祐一が座り、ぼんやりとグラスを揺らしていた。

「祐一くん、また悩んでる顔してるわね。もしかして、週末の競馬のこと？」美咲ママが、艶やかな笑顔で祐一に問いかける。彼女の言葉に、祐一はびくりと肩を震わせた。

「え、美咲ママ、なんでわかるんですか！？そうなんです、今週の東海ステークス、全然予想がまとまらなくて……」美咲はクスッと笑い、競馬雑誌を片手にカウンターに肘をついた。

「ふふ、祐一くんの考えることなんて、だいたいお見通しよ。でもね、競馬はデータが命。闇雲に悩んでちゃ、ダメよ」そう言うと、美咲は競馬雑誌を広げ、指でとんとんとページを叩いた。

「ほら、見てごらんなさい。今回はね、2015年から2019年までのプロキオンステークスのデータを参考に、傾向を分析してみたの。もちろん、今年は条件が変わってダート1400mになったから、その辺りも加味してね」

「まず、人気と配当についてだけどね、プロキオンステークスはね、上位人気が強いってわけじゃないのよ。確かに1番人気や2番人気も勝ってるけど、4番人気や5番人気の中穴馬が勝利するケースも目立つわね。

馬齢の傾向：若き力とベテランの意地

「次に、馬齢ね。これはね、4歳から6歳が中心よ。特に牡馬の4歳は3勝もしてるの。若い力が活躍する舞台ってことね。今年の4歳馬だと、インユアパレス、エートラックス、ビダーヤ、リジルあたりがいるわね。特にビダーヤは人気もしてるし、ここに入ってくるのは納得って感じね。」

性別の傾向：牡馬が圧倒的優位

「そして、性別だけど……これはね、もう牡馬が圧倒的に優勢よ。過去5年で牝馬の連対はたった1頭だけ。よっぽどの実力馬じゃない限り、牝馬は厳しいわね。今年の牝馬はアルファマムとリジルだけど、データ的にはちょっと厳しいかしら。」

脚質の傾向：差し・追込も侮れない

中京ダート1400m「祐一くん、中京ダート1400mって聞くと、やっぱり逃げ・先行が有利だって思うでしょ？でもね、意外とそうでもないのよ、これが。

もちろん逃げ・先行馬も強いんだけど、直線でしっかりと伸びてくる差し・追込馬も侮れないわ。特にハイペースになりやすいレースだから、後ろからスパッと切れる脚を持ってる馬が台頭するケースも結構あるのよ。

今年の逃げ候補だと、エートラックスやメイクアリープ、ロードエクレールあたりがいるけど、果たして粘り切れるかしらね？」

前走成績の傾向：オープン特別組の連対馬に注目！

「あとはね、前走の成績も重要よ。前走JRAの重賞組は意外と不振なのよね。逆に、前走オープン特別組で連対している馬は好走する確率がグンと上がるわ。今年の候補だと、ビダーヤとコンクイスタがこれに当てはまるわね。特にビダーヤは期待できそうよ。」

番外編：リピーターの活躍に期待

「それから、これは番外編だけど、東海ステークスはリピーターが目立つレースなのよ。ベストウォーリアやキングズガードなんかがそうね。このダート1400mっていう特殊な条件で強い実力馬が、何度も好走する傾向があるわ。今年は条件変更があるけど、それでも適性のある馬は強いわよ。」

「私の本命はね、

ビダーヤよ。

4歳馬で、前走オープン特別連対。人気もしそうだけど、データ的には安定感があるわ。

それに、リピーターが目立つこの舞台で、新しいスターになる可能性も秘めていると思うの」

「そして、穴馬にはね、

サンライズフレイムを推したいわ。

人気薄だけど、中穴が来る傾向があるこのレースで、一発を期待できるわよ。展開が嵌まれば、面白い存在になるんじゃないかしら。」

祐一は、美咲ママの言葉に目を輝かせた。「美咲ママ、ありがとうございます！なんだか、すごく自信が湧いてきました！これなら、週末の東海ステークス、楽しめる気がします！」美咲は優しく微笑み、祐一のグラスにゆっくりとウィスキーを注いだ。

「そうよ、競馬は楽しむのが一番。でも、賭けすぎには注意よ。また悩んだらいつでも相談に来なさい。夜蝶は、いつでも祐一くんの味方だからね。」

グラスに注がれた琥珀色の液体が、カウンターの灯りを反射してキラキラと輝く。妖艶な美咲ママと、競馬談義に花を咲かせる夜は、まだまだ終わりそうになかった。