ヒンドゥタイムズ:去勢を乗り越え掴んだ重賞勝利〜名血と名調教師の物語〜
「え、僕、去勢されるの?!」…馬房で暴れて捻挫しちゃったばかりに、まさかの去勢手術を経験したヒンドゥタイムズ。
男を捨てた…いや、オスを捨てた僕に、一体どんな未来が待っているのか? でも、これがまさかの大吉だったんです!2022年の小倉記念では、僕、10番人気という「え、君誰?」みたいな評価だったのに、ちゃっかり2着に滑り込んで周囲を驚かせちゃいました。
そして迎えた2023年の小倉大賞典。なんと今回は2番人気! 「あれ? 僕、人気者になってる?」と内心ドギマギしながらも、見事に重賞初制覇を達成しちゃいました!これって、ただの奇跡じゃないんです。
僕の体には、伝説の名血が流れてるし、何より僕の担当は、あのクロノジェネシスも手掛けた斉藤崇史調教師。
彼が僕の「やんちゃ坊主」な一面を捨てさせて、真の能力を開花させてくれたんです。まさに、これは一頭の馬と、その可能性を信じ抜いた名調教師による、笑いあり涙あり(主に僕の涙…?)の、奇跡の物語なんです!
競馬-神がかり
ヒンドゥタイムズHindu Times 抹消 セ 鹿毛 2016/04/04生
* 通算成績: 24戦6勝
* 獲得賞金: 2億568万6000円
* 重賞勝利: 2023年 小倉大賞典(G3)
* ラストラン: 2024年1月14日 日経新春杯(12着)
調教師・馬主・生産者等
調教師
(西)斉藤崇史
馬主
シルクレーシング
生産者
ノーザンファーム
調教師
斉藤崇史調教師のプロフィールと経歴
* 生年月日: 1982年8月29日生まれ
* 出身地: 神奈川県
* 所属: JRA栗東トレーニングセンター
斉藤調教師は、競馬に縁のなかった家庭に育ちましたが、中学時代に友人の影響で競馬ファンになります。
高校時代には牧場で住み込みの仕事を経験し、馬の世界への道を志します。視力や運動能力に自信がなかったことから、騎手ではなく調教師を目標に定め、日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)に進学しました。
大学卒業後は、育成の名門であるノーザンファーム早来で2年間経験を積みます。その後、JRA競馬学校の厩務員課程に入学し、2008年2月からは松永幹夫厩舎で厩務員、同年8月からは調教助手として活躍しました。
松永厩舎時代には、オークス馬のレッドディザイアを担当し、ドバイやアメリカへの海外遠征も経験するなど、貴重な経験を積みました。
そして、2014年12月に難関の調教師試験に合格し、2016年3月に自身の厩舎を開業しました。
主な成績と管理馬
斉藤崇史厩舎は、開業当初から順調に勝ち星を重ね、わずか数年でJRAのトップトレーナーの一角を担う存在となりました。
- * JRA初勝利: 2016年3月19日 中京12R ゴールドエッセンス
- * 重賞初勝利(地方交流含む): 2018年12月19日 全日本2歳優駿(Jpn1) ノーヴァレンダ
- * JRA重賞初勝利: 2019年2月11日 クイーンカップ(G3) クロノジェネシス
- * JRA GI初勝利: 2019年10月13日 秋華賞(G1) クロノジェネシス
特に、クロノジェネシスは斉藤厩舎を代表する管理馬です。彼女は秋華賞、宝塚記念(2連覇)、有馬記念といったGIタイトルを獲得し、引退レースの有馬記念まで常に高いパフォーマンスを見せ続けました。
斉藤調教師にとって、クロノジェネシスは「この先の調教師生活で、もう一度、出会えるかどうか…」と語るほど、特別な存在であったことが伺えます。凱旋門賞にも挑戦するなど、海外にも積極的に挑みました。
その他にも、NHKマイルカップを制したラウダシオン、エリザベス女王杯を制したジェラルディーナなど、多くのGI馬を輩出しています。
話題や逸話
- * 若手ながらの抜擢: 開業当時33歳と若手ながら、ノーザンファームとの連携が密接であり、開業当初から素質のある馬が多数入厩していました。これは彼の調教助手時代の実績や、馬と真摯に向き合う姿勢が評価された結果と言えるでしょう。
- * 海外経験の豊富さ: 調教助手時代にレッドディザイアと海外遠征を経験したことは、彼の調教手腕や海外レースへの知見を深める上で大きな財産となっています。クロノジェネシスを凱旋門賞に挑戦させたことにも、その経験が活かされていると言えます。
- * 師弟関係: 所属騎手である団野大成騎手の師匠でもあります。師弟関係でありながら、団野騎手の父親も斉藤厩舎に所属しているという珍しい状況で、仕事場では親子でも敬語を使わないなど、アットホームな雰囲気が垣間見えるエピソードもあります。
- * ヤマニンアルリフラでの北九州記念勝利: 2025年7月6日に行われた北九州記念(G3)をヤマニンアルリフラで制覇し、この馬は重賞初挑戦での勝利となりました。この勝利は斉藤調教師にとって、今年の日本ダービー(クロワデュノール)以来、今年3回目の重賞勝ちであり、厩舎の勢いを象徴する勝利となりました。斉藤調教師は「まだ4歳。もっとしっかりしてくる」と、今後の成長にも期待を寄せています。
- * ヒンドゥタイムズの去勢手術と重賞勝利: 質問にもあったように、ヒンドゥタイムズが馬房で暴れて捻挫し去勢手術を受けた後、見事に小倉大賞典を勝利したのも斉藤厩舎の管理馬です。馬の特性を見極め、適切な処置を施し、能力を引き出す手腕が光るエピソードと言えるでしょう。
斉藤崇史調教師は、その若さに似合わず、豊富な経験と卓越した手腕で、日本の競馬界を牽引する存在として、今後もさらなる活躍が期待されています。
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馬主 シルクレーシング
シルクレーシングは、日本中央競馬会(JRA)に馬主登録をしているクラブ法人です。一口馬主クラブである「シルクホースクラブ」の会員が出資した競走馬を所有し、レースに出走させています。
主な特徴は以下の通りです。
主な特徴は以下の通りです。
- * ノーザンファームとの提携: 2011年頃からノーザンファームとの連携を強化し、ノーザンファーム生産の良血馬が多数入厩するようになりました。これにより、近年は非常に高いレベルの活躍馬を輩出しています。
- * 多数のGI馬輩出: アーモンドアイ、イクイノックス、クロノジェネシスなど、競馬史に名を残すような名馬を多数輩出しています。特に、近年では国内だけでなく海外のGIレースでも勝利を収めるなど、その勢いはとどまることを知りません。
- * 安定した実績: ノーザンファームの育成手腕と、斉藤崇史調教師のような若手有力調教師との連携により、毎年安定して勝ち星を重ね、リーディング上位の常連となっています。
- * 勝負服: 水色、赤玉霰、袖赤一本輪の勝負服が特徴です。シルクレーシングは、一口馬主クラブの中でも特に実績と人気が高く、多くの競馬ファンから注目されています。
生産者 ノーザンファーム
ノーザンファームは、北海道勇払郡安平町にある日本を代表する競走馬の生産・育成牧場です。社台グループの中核をなし、世界の競馬界でもトップクラスの規模と実績を誇ります。
主な特徴は以下の通りです。
世界トップレベルの生産・育成: ディープインパクト、アーモンドアイ、イクイノックス、クロノジェネシスなど、数々のGI馬や歴史的名馬を生産・育成し、国内外の主要レースで圧倒的な成績を収めています。
- 一貫生産体制: 繁殖牝馬の管理から、仔馬の誕生、初期馴致(馬を人に慣らすこと)、本格的な育成調教、そしてトレセン(トレーニングセンター)への入厩、さらにその後の休養・立て直しまで、馬の一生をトータルでサポートする体制が整っています。
- 充実した施設: 北海道に広大な敷地を持つ本場のほか、滋賀県の「ノーザンファームしがらき」と福島県の「ノーザンファーム天栄」という2つの大規模な外厩(トレセン以外のトレーニング施設)を持ち、最新鋭の調教施設や医療設備が完備されています。これにより、馬の状態に合わせて最適な環境で調整を行うことが可能です。
- 徹底した個体管理: 一頭一頭の馬に合わせたきめ細やかな管理と、科学的なデータに基づいた調教プログラムで、馬の能力を最大限に引き出すことに注力しています。
- 人材育成: 獣医師や装蹄師、厩務員、調教助手など、専門性の高いスタッフが多数在籍し、人材育成にも力を入れています。
- クラブ法人との連携: シルクレーシングやサンデーサラブレッドクラブなどの大手一口馬主クラブに多くの生産馬を提供しており、これらのクラブ馬がノーザンファームの育成馬として活躍するケースが非常に多いです。
「世界に通用する強い馬づくり」を掲げ、常に新たな挑戦を続けており、日本の競馬界を牽引する存在として絶大な影響力を持っています。
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小倉記念(G3)レース回顧:ヒンドゥタイムズ、去勢初戦で見せた意地と覚醒
新たな自分、去勢初戦の不安と期待
2022年8月14日、小倉競馬場の芝2000m。
真夏のハンデG3、小倉記念のゲートが開いた瞬間、僕、ヒンドゥタイムズは、いつもとは違う感覚に包まれていました。
それは、数ヶ月前に行われた去勢手術という大きな変化によるもの。心なしか体は軽くなったように感じる一方で、レース勘や集中力はどうか、一抹の不安もありました。10番人気という評価も、無理もないでしょう。
レース序盤、僕は中団やや後ろ、馬群の内に位置を取りました。12番という枠順でしたが、焦る気持ちはありません。先行勢がやや飛ばし気味に流れる中、鞍上のホー騎手は僕のペースを尊重してくれました。
正直、去勢後の初戦でどこまでやれるのか、僕自身も探り探りの状態でした。しかし、道中の追走はスムーズで、以前よりも馬群の中での折り合いがつきやすくなったような気がします。これが去勢の効果なのかもしれません。
動き出すレース、冷静な判断
3コーナーから4コーナーにかけて、いよいよレースは動きます。先行馬が苦しくなるのを尻目に、僕は徐々にポジションを上げていきました。
内から外へ、懸命に活路を探します。去勢前は、もう少しピリピリしていたこともありましたが、この日は不思議と落ち着いて、周りの動きがよく見えました。ホー騎手の Goサインと共に、僕のギアが一段上がります。
直線に入ると、僕の前に広がるのは、先行するマリアエレーナと、内から迫るジェラルディーナ。去勢を経験したことで、精神的に大人になったのか、最後の直線での伸び脚はこれまでにないほど力強いものがありました。
内に潜り込み、最後の最後に測ったように外に持ち出すと、馬群を割ってグイグイと差を詰めます。
ゴール前の攻防、そして2着
ゴール板が目前に迫った時、僕の視界にはマリアエレーナの背中がはっきりと捉えられていました。届く!そう思った瞬間、ゴール。結果は2着。
惜しくも勝利には届きませんでしたが、去勢後初戦で、しかも10番人気という低評価を覆しての2着という結果は、僕自身にとっても、陣営にとっても、大きな手応えとなりました。
レースを終えて馬房に戻ると、どこか体の中から漲るような、新しい力が沸いてくるのを感じました。
去勢という経験は、僕にとってネガティブなものではなく、むしろ新たな可能性を開いてくれたのかもしれません。この小倉記念での2着は、僕が再びG1の舞台を目指すための、確かな一歩となったと確信しています。
2023年 小倉大賞典(G3) レース回顧:ヒンドゥタイムズの視点
まさかの転機、そして去勢?(泣)
小倉のターフに立つのは久しぶりだった。七歳という年齢はベテランの域だが、まだまだやれる自信はあった。
思えば、5歳の終わりか、6歳の始めだったか、馬房で暴れて捻挫してしまい、中山金杯を回避することになったんだ。
気性面の改善のためということで、去勢手術を受けた。その甲斐あってか、以前よりも落ち着いてレースに臨めるようになった気がする。
スタートゲートが開く。ムルザバ騎手は慌てず、僕を馬群の中団、いつも通りの位置に収めてくれた。外から勢いよく飛び出した馬たちを見ながら、僕らは冷静にリズムを刻んでいく。
道中は7番手あたりで、前をいく馬たちを射程圏に入れながら進んだ。第1、第2コーナーを回る間も、ポジションはほとんど変わらない。
馬群はそれほど速いペースではなかったから、僕にとっては走りやすい流れだったよ。脚をためながら、虎視眈々とチャンスをうかがった。
「いつでも動けるぜ!」僕の秘めたるパワー
向こう正面に入っても、僕の位置取りは大きく変わらない。
ムルザバ騎手は僕の反応を確かめるように、時折手綱を調整しているのが分かった。
周りの馬たちもまだ余裕がありそうに見えたが、僕の体調は抜群で、いつでも動ける感触があった。勝負どころの第3コーナー、そして最終コーナーへと差し掛かる。
ここでムルザバ騎手がGOサインを出した。少しずつ前との差を詰めていく。前にいたバジオウやアルサトワ、レッドベルオーブといった馬たちが粘りを見せる中、僕も必死に食らいついていった。最後の直線に入る時点では、先頭から4番手までポジションを上げていた。
直線に入ると、僕の持ち味が最大限に活かされた。ムルザバ騎手のステッキに応えて、懸命に脚を伸ばす。外から追い込んできたカテドラルが猛追してきたが、僕にはもう勝利しか見えていなかった。
ゴール板が迫る! カテドラルとの差はほとんどない! 最後はハナ差だったらしいが、僕は確かに一番先にゴール板を駆け抜けた感覚があった。
引退、そして第二の馬生へ
タイムは1分49秒7。
重賞を勝てたこと、そして何より、僕の力を信じて乗ってくれたムルザバ騎手、そして日頃から僕を支えてくれる厩舎スタッフの皆に最高の形で応えられたことが本当に嬉しいよ。
この勝利が僕のキャリアで唯一の重賞タイトルとなり、獲得賞金は2億568万6000円にもなった。そして、僕の現役生活は2024年1月14日の日経新春杯の12着がラストランとなった。
その後、獣医師の診察で浅屈腱支持靭帯(じんたい)炎が判明し、完治に時間がかかること、そして年齢を考慮して引退が決まったんだ。これからは乗馬として、新しい道を歩む予定だ。
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ヒンドゥタイムズの血統解説
ヒンドゥタイムズは、2016年4月4日生まれの鹿毛のセリ馬で、その血統背景には日本競馬を代表する名血と、世界的な活躍馬の血が流れています。
父:ハービンジャー(Harbinger)
ハービンジャーの父は、フランスのGI馬で種牡馬としても成功した**ダンシリ(Dansili)**です。ダンシリは、世界的に大きな影響を与えたデインヒル(Danehill)系の代表的な種牡馬です。
そのダンシリの父は、デインヒル(Danehill)です。
デインヒル自身も現役時代はスプリント戦で活躍し、種牡馬としては世界中でGI馬を送り出し、その血は現代競馬において非常に重要な位置を占めています。
デインヒルの父は、ノーザンダンサー系の名種牡馬であるダンジグ(Danzig)、母は**レイズアネイティヴ(Raise a Native)**系のリズンスター(Razyana)です。
また、ハービンジャーの母はペナンパール(Penang Pearl)です。ペナンパールの父は、凱旋門賞2着などの実績を持つベーリング(Bering)、母は**グアパ(Guapa)**です。
ハービンジャーの血統は、デインヒル系特有のスピードと、ベーリングを通じて受け継がれる底力を兼ね備えています。これが、彼が競走馬として中長距離で活躍し、種牡馬としても幅広い距離で活躍する産駒を送り出す要因となっています。
母:マハーバーラタ
ヒンドゥタイムズの母はマハーバーラタです。
彼女は日本競馬の至宝、ディープインパクトの血を引いています。ディープインパクトは、ご存じの通り史上7頭目の日本ダービーを無敗で制した三冠馬であり、種牡馬としてもサンデーサイレンス系を確立し、数々の名馬を送り出しました。
牝系(母系)の血統背景
ヒンドゥタイムズの母系をさらに深掘りすると、非常に興味深い血脈が見えてきます。
5代母のザ・ブライド(The Bride)は、1973年にアメリカクラシック三冠を達成した伝説的な名馬セクレタリアト(Secretariat)の全姉にあたります。
セクレタリアトは、アメリカ競馬史上最高の競走馬の一頭として語り継がれており、その血を受け継ぐというのは非常に価値のあることです。
ザ・ブライドの子孫からは、日本でも多くの活躍馬が出ています。具体的には、短距離で圧倒的なスピードを見せたニシノフラワー(スプリンターズステークス、桜花賞、阪神3歳牝馬ステークスなど)、重賞を勝利したニシノデイジー、ダートで活躍したチャームアスリープ、そして短距離馬として重賞を制したネロなどが挙げられます。
この牝系は、スピードとパワーを兼ね備え、高いレベルの競走能力を伝える傾向があると言えるでしょう。
まとめ
ヒンドゥタイムズの血統は、父ハービンジャーから受け継いだ芝の中長距離適性と底力、そして母系を通じて流れるディープインパクトの切れ味、さらにセクレタリアトの全姉を5代母に持つという、世界的な名血の背景を持っています。
この多角的な血統背景が、彼が小倉大賞典で重賞を制するに足る能力を開花させた要因の一つと言えるでしょう。