【NHKマイルC】穴馬はデータの中に? –
妖しい光を放つバー「夜蝶」の片隅で、今宵も競馬談義が花開く。妖艶なママ・美咲は、その美貌からは想像もつかないほどの競馬通。緻密なデータ分析を武器に、波乱含みのNHKマイルカップの穴馬を探し求める。そこに、優柔不断な証券マン・祐一が加わり、過去10年のデータという羅針盤を手に、波乱のレースの核心に迫っていく。果たして、データの中に眠る一攫千金の可能性を見つけ出すことはできるのか?
NHKマイルCデータ

第一章:夜の帳と競馬談義の始まり
「美咲さん、今日も雨ですねぇ…」
カウンターの隅で、25歳の証券マン、祐一が頼りない声で話しかけた。彼はいつものように、疲れた顔でハイボールを傾けている。
「あら、祐一さん。いらっしゃい。雨は嫌い?明日は晴れるみたいよ」
美咲はグラスを置き、優しく微笑んだ。
「そうですか…。そういえば、今週末はNHKマイルカップですね。美咲さんはもう予想されたんですか?」
祐一は、競馬新聞を広げながら、どこか他人事のように尋ねた。
「ええ、少しね」美咲は、カウンターの下から競馬雑誌を取り出し、祐一の前にそっと置いた。「今年のNHKマイルカップは、なかなか面白そうよ」
祐一は興味なさそうに雑誌を眺めた。「荒れるレースなんですよね、確か。僕みたいな素人には、さっぱり分かりませんよ」

第二章:深まるデータ分析と有力馬の選定
「ふふ、そうね。過去10年の傾向を見ると、単勝10倍以上が3回も出ているし、馬連万馬券も3回。3連複に至っては7回も万馬券が出ているわ。3連単10万馬券も6回…まさに波乱含みのレースと言えるわね」
美咲は、流れるような口調で過去のデータを語り始めた。祐一は、その意外な知識に少し驚いた表情を見せる。
「へぇ…美咲さん、本当に詳しいんですね」
「まあね。さて、今年の出走馬を見てみましょうか」美咲は、雑誌の出走馬一覧に指を滑らせた。「まず、前走レース別に見ると、皐月賞組が3勝、2着1回と好成績。桜花賞組も2勝、2着3回と侮れないわ。ニュージーランドトロフィー組も2勝しているけれど、ちょっと注意が必要ね。1着馬は過去10年で馬券に絡んでいないの」
祐一は、美咲の言葉に引き込まれるように競馬新聞を見つめた。「皐月賞組だと、マジックサンズですか。桜花賞組は、ヴーレヴー、ショウナンザナドゥ、チェルビアット、マピュース…結構いますね」
「ええ。特に注目したいのは、皐月賞、桜花賞、ニュージーランドトロフィー組ね。ただ、ニュージーランドトロフィー組は、1着馬は思い切って消してみるのも手かもしれないわ」
「なるほど…」祐一は、ペンで新聞に印をつけ始めた。
「それから、キャリアも重要なポイントよ。過去10年の3着以内馬の約87%が、キャリア3〜6戦なの。7戦以上の馬は、少し割り引いて考えた方が良さそうね」
美咲は、出走馬のキャリア欄を指さした。「ヴーレヴー、ショウナンザナドゥ、スリールミニョン、チェルビアット、ネーヴェフレスカ、ミーントゥビー…この辺りは7戦以上だから、今回は少し評価を下げるべきかもしれないわね」
祐一は、先ほど印をつけた馬たちを見直した。「結構、該当馬が多いですね…
「そうね。さらに、前走の着順も見てみましょう。過去10年の3着以内馬の73.3%が、前走1〜5着なの。逆に言うと、前走6着以下だった馬は、かなり厳しいデータが出ているわ」
美咲は、再び出走馬の名前を挙げた。「ヴーレヴー、ショウナンザナドゥ、チェルビアット、ティラトゥーレ、トータルクラリティ、マジックサンズ…これらの馬は、前走の着順からすると、今回は少し厳しいかもしれないわ」
祐一は、美咲が次々と繰り出すデータに、すっかり感心した様子だ。「すごいですね、美咲さん。まるで競馬記者みたいだ」
「ふふ、まあね。これまでのデータを総合的に見ると、有力候補として名前が挙がるのは…アドマイヤズーム、マピュース、コートアリシアンの3頭ね」
美咲は、自信ありげに頷いた。「特にアドマイヤズームは、ニュージーランドトロフィーで2着に入っているけれど、さっき言ったように1着馬は過去データがいまいち。2着だったこの馬の方が、むしろ面白いかもしれないわ」
「なるほど…アドマイヤズーム、マピュース、コートアリシアン…メモしておきます」祐一は、真剣な表情で手帳に書き込んだ。
